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賃上げ率の推移 2026年の賃金引上げ実態調査の改定額と規模別・業種別のデータ

厚生労働省の2026年「賃金引上げ等の実態に関する調査」では、1人平均賃金の改定額は13,926円、改定率は4.4%で前年と同率でした。10年の推移と規模別・産業別のデータ、定期昇給とベースアップの内訳、改定率の計算例、随時改定への影響をまとめます。

公開 約18分ベンチャー・スピリット!編集部AIにより執筆チェック済み
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賃上げ率の推移 2026年の賃金引上げ実態調査の改定額と規模別・業種別のデータ

この記事でわかること

  • 2026年の1人平均賃金の改定額は13,926円、改定率は4.4%。引き上げた企業は92.0%で、率は2年続けて4.4%でした
  • 5,000人以上は4.8%、100〜299人は3.9%。産業では建設業の5.5%が最も高く、運輸業、郵便業は3.0%でした
  • 自社の改定率は「総額の差÷改定前の総額」で出します。定昇とベアを分け、随時改定の2等級差も先に確かめます
対象人事経理労務実務

厚生労働省は2026年10月21日、「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」を公表しました(厚生労働省の結果のページ)。1人平均賃金の改定率は4.4%で、前年と同じ率でした。この記事では、昇給やベースアップを決める人事・経理の担当者に向けて、2026年の結果と10年の推移、規模別・産業別の違いを整理し、自社の改定率の計算と検討の段取り、給与計算と社会保険への影響までつなげます。

賃金引上げ等の実態に関する調査とは 対象・時期・言葉の意味

この調査は、民間企業の賃金や賞与の改定額・改定率・改定の方法などを明らかにするために、厚生労働省が毎年行っています。2026年の調査の概要は次のとおりです(調査の概要と用語の定義による)。

項目 2026年の調査
調査の対象 常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業(15の産業)
調べた時期 2026年7月20日〜8月10日
調べ方 調査票を郵送し、郵送かオンラインで回答
回答 3,668社に調査し、1,862社が有効回答(有効回答率50.8%)
公表 2026年10月21日
賃金の範囲 所定内賃金(諸手当を含み、時間外・休日・深夜の割増手当や慶弔手当などを含まない)の1か月1人あたり
平均の取り方 常用労働者数による加重平均

2026年の数字は、9〜12月に予定している改定も含みます。回答した時点で、まだ改定の額を決めていない会社は、改定額と改定率の集計から外れています。

調査の言葉は、会社の中で使う言葉と少し違います。ここで押さえておくと、自社の数字と比べるときのずれを防げます。

「賃金の改定」には定期昇給が含まれます。ニュースでよく聞く「賃上げ率」は定昇込みの数字が多く、この調査の改定率も定昇込みです。ベアだけの率ではありません。

2026年の結果 改定額13,926円・改定率4.4%

2026年に賃金の改定を実施した(予定を含む)企業を見ると、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」は92.0%(前年91.5%)でした。「引き下げた・引き下げる」は0.4%(同1.1%)、「変わらなかった・変わらない」は0.4%(同1.0%)、「実施しない」は2.1%、「未定」は5.1%です。

額も決まっている会社と実施しない会社を合わせた1人平均賃金の改定は、次のとおりです。

区分 改定額(2026年) 改定額(2025年) 改定率(2026年) 改定率(2025年)
全体 13,926円 13,601円 4.4% 4.4%
うち引き上げた企業 14,257円 13,914円 4.5% 4.5%
うち引き下げた企業 △5,028円 △8,909円 △1.8% △3.5%
労働組合あり 14,757円 15,229円 4.5% 4.8%
労働組合なし 13,033円 11,980円 4.2% 4.0%

出典: 厚生労働省「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」第2表。

全体の数字には、賃金の改定を実施しない会社も入っています。引き上げた会社だけで見ると、改定額は14,257円です。

労働組合がある会社は全体の23.3%(前年22.0%)で、その中で賃上げ要求の交渉があった会社は84.7%(同78.3%)でした。組合ありの率は4.8%から4.5%に下がり、組合なしは4.0%から4.2%に上がっています。差は0.8ポイントから0.3ポイントに縮みました。

改定の時期も確かめておきます。賃金の改定を実施した(予定を含む)会社のうち、1〜8月のみに改定した会社が79.0%、9〜12月のみが7.7%、1〜8月に改定したうえで9〜12月にも予定している会社が6.0%です(第1表)。ここでの「時期」は、改定後の賃金が給与計算に適用される時期をいいます。

賃上げ率の推移 10年の改定額と改定率

調査の累年表(付表2)から、2016年〜2026年の1人平均賃金の改定額と改定率を並べます。

厚生労働省の賃金引上げ等の実態に関する調査で、1人平均賃金の改定額を2016年から2026年まで棒で並べた図と、改定率の棒の図。改定額は2016年5,176円、2017年5,627円、2018年5,675円、2019年5,592円、2020年4,940円、2021年4,694円、2022年5,534円、2023年9,437円、2024年11,961円、2025年13,601円、2026年13,926円。改定率は1.9%、2.0%、2.0%、2.0%、1.7%、1.6%、1.9%、3.2%、4.1%、4.4%、4.4%。下の欄に、時期の整理、労働組合の有無別の改定率と額(2023〜2026年)、1990年の6.0%と1991年の14,394円などをまとめている。
1人平均賃金の改定額と改定率の推移(2016〜2026年)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」令和8年の概況
調査年 改定額 改定率
2026年(令和8年) 13,926円 4.4%
2025年(令和7年) 13,601円 4.4%
2024年(令和6年) 11,961円 4.1%
2023年(令和5年) 9,437円 3.2%
2022年(令和4年) 5,534円 1.9%
2021年(令和3年) 4,694円 1.6%
2020年(令和2年) 4,940円 1.7%
2019年(令和元年) 5,592円 2.0%
2018年(平成30年) 5,675円 2.0%
2017年(平成29年) 5,627円 2.0%
2016年(平成28年) 5,176円 1.9%

出典: 厚生労働省「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」付表2。令和5〜7年の各年の概況の第2表と同じ値です。

2019年までは5,000円台・2%前後でした。2020年と2021年に減ったあと、2022年から増え続け、2025年と2026年は率が4.4%で並びました。額は2022年の5,534円から、4年で2.5倍ほどになっています(編集部が計算)。

同じ累年表をさかのぼると、率が最も高いのは1990年(平成2年)の6.0%(14,199円)で、額が最も大きいのは1991年(平成3年)の14,394円(5.9%)です。2026年の13,926円は、1982年以降の表で3番目の大きさです。最も低いのは2003年(平成15年)の3,064円・1.0%でした。

企業規模別の改定額と改定率

2026年は、規模が大きいほど改定率が高くなっています。2022年からの推移も同じ調査の各年の概況で確かめました。

賃金引上げ等の実態に関する調査の2026年の結果を企業規模別に示した図。改定率は5,000人以上4.8%(16,680円)、1,000〜4,999人4.7%(15,402円)、300〜999人4.2%(12,912円)、100〜299人3.9%(11,279円)、全体4.4%(13,926円)。2022年から2026年の改定率と改定額の表と、引き上げた企業の割合、定期昇給制度のある企業の割合、ベアを行った企業の割合、最も重視した要素の規模別の一覧を載せている。
企業規模別の改定額・改定率(2026年と2022〜2025年)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」令和8年の概況
規模 改定額 改定率 前年の率 引き上げた企業の割合
5,000人以上 16,680円 4.8% 5.1% 97.7%
1,000〜4,999人 15,402円 4.7% 5.0% 94.6%
300〜999人 12,912円 4.2% 4.0% 93.4%
100〜299人 11,279円 3.9% 3.6% 91.3%
全体 13,926円 4.4% 4.4% 92.0%

出典: 概況の第1表・第2表。

規模(改定率) 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年
5,000人以上 2.0% 4.0% 4.8% 5.1% 4.8%
1,000〜4,999人 1.8% 3.1% 4.1% 5.0% 4.7%
300〜999人 2.0% 3.2% 3.8% 4.0% 4.2%
100〜299人 1.9% 2.9% 3.7% 3.6% 3.9%
全体 1.9% 3.2% 4.1% 4.4% 4.4%

出典: 令和5年・令和6年・令和7年・令和8年の概況の第2表。

5,000人以上と1,000〜4,999人は前年より下がり、300〜999人と100〜299人は上がりました。規模による差は、5,000人以上と100〜299人で0.9ポイントです(2025年は1.5ポイント)。差は縮んでいますが、100〜299人の会社が賃金を引き上げた割合は91.3%で、5,000人以上の97.7%より6.4ポイント低くなっています。

産業別の改定額と改定率

産業別に見ると、2026年の改定率は建設業の5.5%が最も高く、運輸業、郵便業の3.0%が最も低くなりました。

賃金引上げ等の実態に関する調査で、15の産業の1人平均賃金の改定率を2026年と2025年の2本の横棒で比べた図。2026年は高い順に建設業5.5%(20,599円)、学術研究、専門・技術サービス業5.4%、電気・ガス・熱供給・水道業5.0%、製造業4.7%、情報通信業4.4%、卸売業、小売業4.3%、教育、学習支援業4.3%、サービス業4.3%、宿泊業、飲食サービス業4.2%、鉱業等4.1%、不動産業等4.0%、金融業、保険業3.8%、生活関連サービス業等3.5%、医療、福祉3.3%、運輸業、郵便業3.0%。下の欄に、率が上がった産業8と下がった産業7、引き上げた企業の割合、ベアを行う企業の割合をまとめている。
産業別の改定額・改定率(2026年と2025年)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」令和8年の概況
産業 改定額(2026年) 改定率(2026年) 改定額(2025年) 改定率(2025年) 引き上げた企業の割合(2026年)
建設業 20,599円 5.5% 20,724円 5.9% 85.1%
学術研究、専門・技術サービス業 19,492円 5.4% 14,911円 3.8% 91.8%
電気・ガス・熱供給・水道業 17,634円 5.0% 19,611円 5.3% 100.0%
製造業 15,134円 4.7% 15,952円 5.2% 95.8%
情報通信業 17,884円 4.4% 14,096円 3.9% 96.6%
卸売業、小売業 13,173円 4.3% 12,183円 4.2% 96.1%
教育、学習支援業 12,674円 4.3% 9,300円 3.2% 84.7%
サービス業(他に分類されないもの) 11,927円 4.3% 8,621円 3.4% 90.3%
宿泊業、飲食サービス業 11,940円 4.2% 10,177円 3.6% 87.8%
鉱業、採石業、砂利採取業 11,589円 4.1% 18,020円 6.1% 87.1%
不動産業、物品賃貸業 12,461円 4.0% 14,368円 4.5% 87.8%
金融業、保険業 12,769円 3.8% 17,567円 4.1% 88.8%
生活関連サービス業、娯楽業 9,210円 3.5% 7,744円 2.9% 85.9%
医療、福祉 8,540円 3.3% 5,589円 2.3% 95.8%
運輸業、郵便業 8,815円 3.0% 10,545円 3.6% 81.1%

出典: 概況の第1表・第2表。並びは2026年の改定率の高い順です。

15の産業のうち、前年より率が上がったのは8産業、下がったのは7産業です。学術研究、専門・技術サービス業(3.8%から5.4%)、教育、学習支援業(3.2%から4.3%)、医療、福祉(2.3%から3.3%)が大きく上がり、鉱業、採石業、砂利採取業(6.1%から4.1%)が最も下がりました(差は編集部が計算)。

読むときは、産業ごとの回答数が少ないことにも気を付けます。鉱業、採石業、砂利採取業のような小さな産業は、数社の違いで数字が大きく動きます。建設業と運輸業、郵便業は、改定を「未定」とした会社がそれぞれ14.9%・14.8%あり、引き上げた割合が低く出ている面があります(第1表)。

定期昇給とベースアップ 区別がある会社の内訳

自社の数字を比べるとき、見落とされやすいのが「定昇とベアを区別しているか」です。調査では、賃金の改定を実施した(予定を含む)会社と実施しない会社のうち、定期昇給制度がある会社を対象に、ベアの実施を聞いています。

項目(2026年) 割合 2025年
定昇制度がある 84.2% 81.2%
定期昇給を行った・行う 81.2% 76.8%
定昇制度がない 13.9% 17.7%
(定昇制度がある会社の中)ベアを行った・行う 57.9% 57.8%
(同)ベアを行わなかった・行わない 15.4% 15.1%
(同)定昇とベアの区別なし 24.7% 25.5%

出典: 概況の第3表〜第5表。

定昇とベアの区別がある会社(73.3%)だけで見ると、ベアを行った・行う会社は79.0%、行わなかった・行わない会社は21.0%です。区別がない会社が24.7%あります。

労働組合の有無で分かれる点も押さえます。ベアを行った・行う会社は、組合ありで83.9%、組合なしで48.8%でした。規模別では、5,000人以上が79.3%、100〜299人が52.7%です。産業別では、電気・ガス・熱供給・水道業の94.1%と運輸業、郵便業の85.3%が高く、教育、学習支援業は31.6%でした。

定期昇給の内容は、「自動昇給」が28.4%、「その他(業績評価など)」が73.0%です(複数回答)。年齢や勤続年数で自動的に上がる制度より、評価で決める制度のほうが多くなっています。

賃金の改定で重視した要素 業績が46.0%

改定の額が決まっている会社に、賃金の改定を決めるとき最も重視した要素を聞いています。2026年は、「企業の業績」が46.0%(前年41.7%)で最も多く、次いで「労働力の確保・定着」12.1%(同17.0%)、「雇用の維持」9.2%(同11.9%)でした。

重視した要素 最も重視(2026年) 最も重視(2025年) 複数回答(2026年) 複数回答(2025年)
企業の業績 46.0% 41.7% 63.2% 63.8%
労働力の確保・定着 12.1% 17.0% 49.8% 49.8%
雇用の維持 9.2% 11.9% 37.8% 43.7%
親会社・関連会社の改定の動向 6.0% 5.9% 12.9% 13.1%
世間相場 5.5% 7.7% 33.0% 38.1%
最低賃金 5.3% 3.2% 17.9% 11.9%
消費者物価の動向 3.9% 3.3% 18.5% 19.2%
労使関係の安定 1.5% 0.6% 8.5% 8.0%
前年度の改定実績 0.7% 1.2% 7.3% 9.1%

出典: 概況の第7表・付表3。複数回答は、最も重視したものを1つ、ほかに重視したものを2つまで選ぶ(最大3つ)方式の割合です。そのほかの選択肢(行政からの支援、専門家からの助言など)は省いています。

最低賃金は、最も重視した割合が3.2%から5.3%に、複数回答の割合が11.9%から17.9%に増えました。なお、「最低賃金」「行政からの支援」「専門家からの助言」は、令和7年(2025年)調査から選択肢に加わっています。令和6年以前の調査には、この項目がありません。

規模別に見ると、すべての規模で「企業の業績」が最も多くなっています。5,000人以上は36.5%で、「労働力の確保・定着」(19.9%)と「世間相場」(13.7%)も目立ちます。100〜299人は業績が49.3%です。

自社の改定率の計算 編集部の計算例

調査の改定率を自社で再現するときは、人数の重みを付けて、総額で計算します。部署や等級ごとの率を、人数に関係なく平均するのはよくある間違いです。

次の100人の会社(編集部が作った例)で考えます。改定の対象は、役員を除く常用の社員です。

区分 人数 改定前の月額(1人) 改定後の月額(1人) 差額(1人) 区分ごとの率
一般社員 60人 280,000円 292,000円 12,000円 4.3%
主任・係長 30人 350,000円 364,000円 14,000円 4.0%
管理職 10人 500,000円 510,000円 10,000円 2.0%
  1. 改定前の総額: 280,000円×60人+350,000円×30人+500,000円×10人=32,300,000円(1人平均323,000円)
  2. 改定後の総額: 292,000円×60人+364,000円×30人+510,000円×10人=33,540,000円(1人平均335,400円)
  3. 差額の総額: 1,240,000円。1人平均の改定額は12,400円
  4. 改定率: 12,400円÷323,000円=3.84%、つまり約3.8%

区分ごとの率(4.3%・4.0%・2.0%)を単純に平均すると3.4%になり、実際の3.8%とずれます。人数の多い一般社員の影響が大きいためです。

定昇とベアを分けるときは、次のように出します。全員の賃金表を5,000円ずつ上げた(ベア)とすると、5,000円×100人=500,000円で、率は500,000÷32,300,000=1.5%です。残りの740,000円(2.3%)が、定期昇給や昇格などの分になります。月額の差額が1,240,000円なので、月給だけで見た年間の増加は14,880,000円(1,240,000円×12か月)です。賞与や残業代、社会保険料の事業主負担は、ここに入っていません。

この例を調査と並べると、100〜299人の区分(3.9%・11,279円)に近い値です。比べるときは、次の条件をそろえます。

  • 所定内賃金で計算する(時間外・休日・深夜の割増手当、慶弔手当などは除く)
  • 常用労働者(期間を定めずに雇われている人)を対象にする。役員、日雇や有期の人は除く
  • 調査の全体の数字には、改定を実施しない会社も0円として入っている(自社の昇給を決めるときの比較には、引き上げた会社の数字も見る)
  • 「改定前」は、改定前の月額の平均にする(昇給の前後で同じ人数で見る)

改定の検討の段取り 時期・材料・社員への知らせ方

調査では、改定の時期は1〜8月が中心(79.0%)です。4月の新年度に合わせる会社が多いと考えて、逆算の例を次の表にしました(編集部の例。会社の決算期や賃金規程の定めで読み替えてください)。

時期の目安(4月改定の例) やること 担当
前年の10〜11月 材料を集める(この調査、最低賃金、物価、賃金の統計、自社の業績見込み) 人事・経理
12〜1月 昇給の総額と配分の案をつくる。定昇とベアの区別を決める 人事・経理
1〜2月 経営の決定。労働組合がある会社は交渉に合わせる 経営・人事
2〜3月 賃金表・賃金規程の改定の要否を確かめる。社員一人ひとりの新しい額を出す 人事
3月 社員に知らせる。給与計算のマスタを更新する準備 人事・経理
4月〜 新しい額で給与を計算する。社会保険の随時改定の対象者を確かめる 経理・労務

材料は4つに分ける

調査で重視された要素を見ると、業績(46.0%)のほか、人の確保(12.1%)、世間相場(5.5%)、最低賃金(5.3%)、物価(3.9%)が上がっています。自社の検討でも、次の材料を集めておくと説明しやすくなります。

材料 見るもの 手がかり
自社の業績と人件費 売上・利益の見込み、人件費の総額 前の項の計算例の方法で、総額の差を見る
最低賃金 事業場がある都道府県の額と、新入社員・パートの時間額 最低賃金の推移 全国平均と都道府県別の金額 引き上げに備える人件費の見込み
物価 総務省統計局の消費者物価指数 総務省統計局の消費者物価指数のページ
同業の水準 この調査の規模別・産業別、国税庁の平均給与 平均年収の推移 年代別・男女別・業種別に見る民間給与実態統計調査

賞与にも波及します。この調査では、夏の賞与を支給した(額が決まっている)会社は88.5%(前年88.4%)でした。基本給を上げると賞与の計算にも響く会社は、賞与(ボーナス)の平均支給額 夏と冬の推移と業種別・規模別も見ながら、年間の総額で考えます。

決めたら社員に知らせる

額が決まったら、社員一人ひとりに新しい額と適用の時期を知らせます。会社の賃金規程や、昇給の通知の様式に決まりがあれば、それにしたがいます。賃金表や手当の額を規程に書いている場合は、規程の改定が要るかも確かめてください。

給与計算と社会保険の随時改定への影響

昇給の額を決めたあと、経理・労務で確かめることが2つあります。給与計算の設定と、社会保険の標準報酬月額です。

給与計算では、新しい基本給と手当の額をマスタに入れ、適用の開始月を合わせます。期中の改定、さかのぼって払う差額は、賃金規程どおりに計算します。さかのぼって昇給し、差額をあとで払う場合は、随時改定の月の考え方が変わります(下の枠)。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、昇給で報酬が大きく変わったとき、日本年金機構の案内にある「随時改定(月額変更届)」の対象かどうかを確かめます。

「変動月」は、変動した固定的賃金で報酬を支払った月です。たとえば4月に支払う給与から変わったなら、4〜6月の3か月の平均を従前の標準報酬月額と比べ、7月から改定されます。さかのぼって昇給して差額を支払ったときは、差額を支払った月が変動月になり、差額を除いた3か月の平均で比べます。月額変更届は「速やかに」提出します。

編集部の計算例で、等級の差を見ます。厚生年金保険の令和8年度の保険料額表では、報酬月額290,000円以上310,000円未満が標準報酬月額300,000円(19等級)、310,000円以上330,000円未満が320,000円(20等級)、330,000円以上350,000円未満が340,000円(21等級)です。健康保険の等級や額は、加入先(協会けんぽ・健康保険組合)の表で確かめます。

例 従前 昇給後(3か月の平均) 等級 随時改定
昇給12,000円 月額300,000円(19等級) 312,000円 20等級(1等級差) 対象にならない
昇給35,000円 月額300,000円(19等級) 335,000円 21等級(2等級差) 対象になる

上の例は、支払基礎日数の要件を満たし、残業代などの非固定的賃金が変わらない場合です。日本年金機構の案内では、固定的賃金が上がっても、残業手当などの非固定的賃金が減って、3か月の平均で出した標準報酬月額が2等級以上下がった場合は、対象にならないとしています。

4月に昇給した人が、4〜6月の報酬で7月に改定される人と、そうならない人で分かれます。7月に改定の月額変更届を出す人は、7月10日までの算定基礎届(定時決定・毎年7月1日現在の全被保険者が対象)を出さなくてよい人にあたります(定時決定の案内による)。8月・9月に随時改定が予定される人は、算定基礎届の扱いが別にあります。手続きの様式と詳しい要件は、日本年金機構のページで確かめてください。

昇給が数千円のベアだけなら、1〜2等級の差で、対象にならない人が多くなります。大きく上がる人(昇格・職務の変更など)や、手当の新設で報酬が増える人を、先に一覧にしておくと、4月に慌てずにすみます。

今日からできること

  1. 自社の数字を出す。昇給の案を、人数の重みを付けた総額で計算し、改定額(円)と改定率(%)を出します。定昇とベアも分けます。
  2. 同じ条件の数字と並べる。この調査の規模別・産業別の表から、自社の区分の行を選びます(100人未満の会社は目安として使います)。
  3. 材料を4つ集める。自社の業績と人件費、最低賃金、物価、同業の水準です。会議の資料には、調査名・年・公表日・対象を書き添えます。
  4. 昇給の影響を一覧にする。昇給額の大きい人、手当を変える人を拾い、随時改定の2等級差に当たりそうな人を分けておきます。
  5. 社員への知らせと、給与計算の設定の日を、カレンダーに入れる。

この記事の数字は、2026年10月21日に厚生労働省と日本年金機構の資料で確かめたものです。2026年の数字には9〜12月の予定が含まれ、調査の結果は今後の実際の改定と違う場合があります。随時改定などの手続きの要件は変わることがあるので、届け出の前に日本年金機構の最新の案内を確かめてください。

よくある質問

Q4.4%はベースアップだけの率ですか。

Aいいえ。調査の「賃金の改定」は、定期昇給、ベースアップ、諸手当の改定などをまとめたものです。1人平均賃金の改定額を、改定前の1人平均賃金で割った率なので、定期昇給の分も入っています。ベアだけの率は、この調査では公表されていません。ベアを行った・行う企業の割合は57.9%(定期昇給制度がある企業の中)です。

Q従業員が30人の会社でも、この数字と比べてよいですか。

A調査の対象は常用労働者100人以上の会社です。30人の会社は対象に入っていないので、比べるときは目安として扱い、100〜299人の区分(改定率3.9%・改定額11,279円)を参考にします。人数が少ない会社は、1人の昇給が率に大きく出る点にも注意してください。

Q昇給したら、必ず月額変更届が必要ですか。

Aいいえ。日本年金機構の案内では、固定的賃金の変動があり、変動月から3か月の報酬の平均で出した標準報酬月額が従前と2等級以上の差になり、3か月とも支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)のとき、随時改定になります。昇給が数千円なら、等級が1つ上がる程度で対象にならないことが多くなります。

Q2026年の結果は、いつ公表されましたか。

A厚生労働省が2026年10月21日に公表しました。前年の令和7年調査は2025年10月14日、令和6年調査は2024年10月28日、令和5年調査は2023年11月28日の公表で、年によって時期が違います。

出典・参考

チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月21日)

執筆

ベンチャー・スピリット!編集部AIにより執筆

書いた AI: AI記者(解説)

法令・官公庁の資料・公的な統計などの一次情報を調べて、バックオフィスの仕事・ビジネスマナー・会社のしくみの解説記事と図解を書きます。数字と日付は出典と照らして確かめ、記事の最後に出典を載せています。使っているAI: Anthropic Claude。

監修

佐々木 航株式会社Game

代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。

メモ: 掲載時に自動で(しばらくの間)

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