「うちの離職率は高いのか、低いのか」。人事や労務の担当者が経営層に聞かれたとき、物差しになるのが厚生労働省「雇用動向調査」の離職率です。
厚生労働省は2026年8月31日に、令和7(2025)年の調査結果を公表しました。この記事では、離職率の平均と入職率との差、産業別・年齢別・離職理由別の数字を整理し、自社の離職率の計算のしかたと、国の資料にある定着の取り組みをまとめます。
雇用動向調査とは 離職率の決まり
雇用動向調査は、会社や事業所にどれだけの人が入り、どれだけの人が辞めたかを調べる、厚生労働省の統計調査です。上半期と下半期の年2回行い、年計としてまとめて公表します。
この記事の数字は、断りのない限り、令和7年調査(2025年1月から12月)のものです。
| 項目 |
令和7年調査 |
| 対象の産業 |
日本標準産業分類の16大産業(鉱業から、サービス業〔他に分類されないもの〕まで) |
| 対象の事業所 |
常用労働者5人以上の事業所から無作為に抽出した約15,000事業所 |
| 回答 |
調査対象14,840事業所、平均有効回答率60.9% |
| 対象の人 |
常用労働者(期間を定めずに雇われている人と、1か月以上の期間を定めて雇われている人。パートタイム労働者を含む) |
| 公表 |
2026年8月31日 |
用語の決まりは、次のとおりです。自社の数字を出すときも、ここにそろえます。
調査は事業所に尋ねる標本調査なので、数字は年ごとに多少動きます。また、「1月1日現在」の人数は、前年12月末日の状況です。
入職率と離職率の推移 2025年は離職率13.7%
入職率と離職率の推移(2016〜2025年・雇用動向調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「雇用動向調査」
2025年1年間の入職者は7,526.8千人、離職者は7,052.6千人で、入職者が474.2千人多くなりました。1月1日現在の常用労働者数51,337.6千人に対する割合は、入職率が14.7%、離職率が13.7%です。入職率より離職率が1.0ポイント低く、入職超過率は1.0ポイントでした。
前年と比べると、入職率は0.1ポイント、離職率は0.5ポイント下がり、入職超過率は0.4ポイント広がりました。
| 年 |
入職率 |
離職率 |
入職超過率 |
| 2025年(令和7年) |
14.7% |
13.7% |
1.0ポイント |
| 2024年(令和6年) |
14.8% |
14.2% |
0.6ポイント |
| 2023年(令和5年) |
16.4% |
15.4% |
1.0ポイント |
| 2022年(令和4年) |
15.2% |
15.0% |
0.2ポイント |
| 2021年(令和3年) |
14.0% |
13.9% |
0.1ポイント |
| 2020年(令和2年) |
13.9% |
14.2% |
−0.3ポイント |
| 2019年(令和元年) |
16.7% |
15.6% |
1.1ポイント |
| 2018年(平成30年) |
15.4% |
14.6% |
0.8ポイント |
| 2017年(平成29年) |
16.0% |
14.9% |
1.1ポイント |
| 2016年(平成28年) |
15.9% |
15.0% |
0.9ポイント |
出典: 厚生労働省「雇用動向調査結果の概況」各年(令和7年調査の図1-1)。入職超過率は編集部が入職率と離職率の差として計算しました。
10年の中で、離職率が入職率を上回ったのは2020年だけです。2025年の13.7%は、この10年の離職率で最も低い値でした。
就業形態別では、次のとおりです。男性は入職率13.4%・離職率12.5%、女性は16.1%と15.1%でした。
| 区分 |
入職率 |
離職率 |
入職超過率 |
| 常用労働者計 |
14.7% |
13.7% |
1.0ポイント |
| 一般労働者 |
12.0% |
11.4% |
0.6ポイント |
| パートタイム労働者 |
21.7% |
19.9% |
1.8ポイント |
出典: 令和7年雇用動向調査 表1。
パートタイム労働者の離職率は、一般労働者の約1.7倍です。パートが多い会社や業種は、全体の離職率が高く出やすくなります。
産業別の離職率 最も高い業種と低い業種で17.1ポイントの差
産業別の離職率と入職率(2025年・16大産業)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年雇用動向調査」
離職率が最も高いのは宿泊業,飲食サービス業の23.7%で、サービス業(他に分類されないもの)の21.2%、生活関連サービス業,娯楽業の20.1%が続きます。最も低いのは金融業,保険業の6.6%です。最も高い業種と低い業種の差は17.1ポイントです。
入職超過率が大きいのは宿泊業,飲食サービス業(4.1ポイント)と情報通信業(3.2ポイント)でした。離職が入職を上回ったのは、複合サービス事業(−2.3ポイント)と製造業(−0.2ポイント)です。
| 産業 |
入職率 |
離職率 |
入職超過率 |
一般の離職率 |
パートの離職率 |
前年の離職率 |
| 宿泊業,飲食サービス業 |
27.8% |
23.7% |
4.1 |
21.5% |
25.0% |
25.1% |
| サービス業(他に分類されないもの) |
21.8% |
21.2% |
0.6 |
20.3% |
23.8% |
20.3% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 |
21.3% |
20.1% |
1.2 |
16.1% |
25.1% |
19.0% |
| 教育,学習支援業 |
15.5% |
15.1% |
0.4 |
9.8% |
26.6% |
13.1% |
| 医療,福祉 |
14.5% |
14.3% |
0.2 |
13.6% |
15.9% |
13.8% |
| 不動産業,物品賃貸業 |
14.4% |
12.1% |
2.3 |
10.5% |
19.6% |
13.5% |
| 卸売業,小売業 |
12.6% |
11.9% |
0.7 |
8.5% |
17.6% |
15.1% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 |
12.9% |
11.7% |
1.2 |
10.0% |
26.7% |
11.1% |
| 情報通信業 |
13.6% |
10.4% |
3.2 |
10.0% |
21.9% |
10.2% |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 |
10.5% |
10.2% |
0.3 |
9.8% |
19.0% |
9.1% |
| 製造業 |
9.6% |
9.8% |
−0.2 |
9.2% |
14.2% |
9.6% |
| 運輸業,郵便業 |
9.6% |
9.0% |
0.6 |
8.1% |
12.2% |
10.2% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 |
9.3% |
8.8% |
0.5 |
8.0% |
19.6% |
8.8% |
| 建設業 |
10.4% |
8.7% |
1.7 |
7.9% |
19.3% |
10.0% |
| 複合サービス事業 |
6.3% |
8.6% |
−2.3 |
7.7% |
12.6% |
7.8% |
| 金融業,保険業 |
8.7% |
6.6% |
2.1 |
6.3% |
10.6% |
8.0% |
| 産業計 |
14.7% |
13.7% |
1.0 |
11.4% |
19.9% |
14.2% |
出典: 令和7年雇用動向調査 表4-2、付属統計表2-2(前年の離職率は令和6年の値)。入職超過率の単位はポイントです。離職率の高い順に並べました。
読むときの注意が2つあります。
1つ目は、パートタイム労働者の割合です。宿泊業,飲食サービス業は、1月1日現在の常用労働者4,396.0千人のうち2,795.0千人(63.6%)がパートです。金融業,保険業は1,392.5千人のうち92.3千人(6.6%)でした。業種の差の一部は、パートの割合の差です。一般労働者だけで見ると、宿泊業,飲食サービス業は21.5%、金融業,保険業は6.3%です。
2つ目は、1年で大きく動く業種があることです。卸売業,小売業は2024年の15.1%から2025年は11.9%に、教育,学習支援業は13.1%から15.1%に変わりました。社内の資料には、2〜3年分を並べると説明がぶれにくくなります。
年齢別の離職率 若い年代と60歳以上で高い
年齢階級別・男女別の離職率(2025年・入職率つき)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年雇用動向調査」
年齢階級別の離職率は、19歳以下の33.3%が最も高く、20〜24歳が25.1%、25〜29歳が17.7%と、年齢が上がるほど下がります。最も低いのは50〜54歳の8.0%で、60〜64歳(17.1%)と65歳以上(18.5%)で再び上がります。
| 年齢階級 |
入職率 |
離職率(男女計) |
男性 |
女性 |
| 19歳以下 |
72.1% |
33.3% |
32.0% |
34.5% |
| 20〜24歳 |
38.6% |
25.1% |
24.6% |
25.5% |
| 25〜29歳 |
19.1% |
17.7% |
16.4% |
19.1% |
| 30〜34歳 |
14.4% |
14.6% |
13.2% |
16.2% |
| 35〜39歳 |
10.5% |
10.4% |
8.4% |
12.7% |
| 40〜44歳 |
10.6% |
9.9% |
7.6% |
12.5% |
| 45〜49歳 |
9.3% |
8.2% |
6.1% |
10.5% |
| 50〜54歳 |
7.7% |
8.0% |
6.3% |
9.9% |
| 55〜59歳 |
7.8% |
9.1% |
8.1% |
10.1% |
| 60〜64歳 |
11.7% |
17.1% |
19.1% |
14.8% |
| 65歳以上 |
10.0% |
18.5% |
19.8% |
17.2% |
出典: 令和7年雇用動向調査 第3表・第6-1表・第40表(e-Stat)から編集部が計算。分母は6月末日現在の常用労働者数です。
59歳までは、すべての年齢階級で女性の離職率が男性を上回ります。差が最も大きいのは40〜44歳で、女性12.5%、男性7.6%です。60歳以上では、男性が女性を上回ります。
離職率が入職率を上回るのは、30〜34歳と、50歳以上のすべての階級です。若い年代は、辞める人も多い一方で、入る人はそれ以上に多くなっています。
離職の理由 公式の表で分かる範囲
雇用動向調査の離職理由は、離職者がいた事業所が回答したものです。離職者本人の言葉ではない点に注意してください。
2025年の離職率13.7%を理由別に分けると、次のとおりです。
| 離職理由 |
男女計 |
男性 |
女性 |
| 離職率 計 |
13.7% |
12.5% |
15.1% |
| 個人的理由 |
10.2% |
8.8% |
11.7% |
| うち結婚・出産・育児・介護・看護 |
0.3% |
0.1% |
0.5% |
| うちその他の個人的理由 |
9.9% |
8.7% |
11.2% |
| 契約期間の満了 |
1.7% |
1.7% |
1.8% |
| 事業所側の理由(経営上の都合・出向・出向元への復帰) |
0.9% |
0.9% |
0.8% |
| 定年 |
0.6% |
0.8% |
0.4% |
| 死亡・傷病 |
0.3% |
0.2% |
0.3% |
出典: 令和7年雇用動向調査 付属統計表3-2(離職理由別離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数)。「本人の責」は0.0%のため省いています。結婚・出産・育児・介護・看護の欄は、個人的理由から「その他の個人的理由」を引いた値(編集部が計算)です。
離職者全体に占める割合では、個人的理由が74.3%で、そのうち72.0%が「その他の個人的理由」です。この表は、「その他の個人的理由」の中身(給料や人間関係など)までは分けていません。
年齢別にみると、60〜64歳の男性は離職者の37.1%が定年、65歳以上の男性は35.1%が契約期間の満了です。30〜34歳の女性は、離職者の8.7%が出産・育児です(付属統計表3-1)。
中身を知りたいときのために、同じ調査には、転職入職者(前の会社を辞めて入った人)が前職を辞めた理由の表があります。この表は、個人の回答です。
| 前職を辞めた理由 |
男性 |
女性 |
| その他の個人的理由 |
16.8% |
23.8% |
| 定年・契約期間の満了 |
16.1% |
9.8% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった |
8.5% |
12.9% |
| 給料等収入が少なかった |
9.9% |
8.6% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった |
8.9% |
11.5% |
| 会社の将来が不安だった |
6.9% |
4.3% |
出典: 令和7年雇用動向調査 表5(転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者。結婚・出産・育児・介護・看護、その他の理由は省略)。
「その他」を除くと、男性は「定年・契約期間の満了」16.1%、「給料等収入が少なかった」9.9%の順に、女性は「労働条件が悪かった」12.9%、「人間関係が好ましくなかった」11.5%の順に多くなります。辞めた人全体ではなく、転職した人の回答です。
自社の離職率を計算して比べる手順
統計と並べるときは、計算の範囲を調査にそろえます。
- 期間を決める。調査は1月から12月の1年間です。自社は暦年にするか、年度にするかを決め、資料に書きます。
- 離職者を数える。期間中に退職した人と解雇した人を数えます。定年退職と契約期間の満了も入ります。同じ会社の別の事業所への異動は入れません。
- 分母を出す。期間の最初の日(1月1日なら前年12月末日)の常用労働者数です。パートタイム労働者と、1か月以上の期間を定めた社員を含めます。
- 割る。離職者数 ÷ 期首の常用労働者数 × 100で、離職率を出します。
- 入職率も同じ形で出し、差(入職超過率)を見る。
- 同じ産業の数字と並べる。一般労働者とパートタイム労働者の両方で出して、同じ区分の数字と比べます。
よくあるずれは、分母を期末の人数にすること(期首120人、期末130人なら、130でなく120で割ります)と、一般労働者だけの数字を産業計と比べることです。一般は一般の11.4%、全体は全体の13.7%と比べます。
雇用動向調査の離職率は、「入社から3年以内に辞めた人の割合」とは別の数字です。厚生労働省は、新規学卒者の離職状況を、雇用保険の記録から別に集計し、「就職後3年以内離職率」として公表しています(新規大卒なら、3月に就職した人のうち、3年以内に離職した人の割合)。新卒の定着を見るときは、こちらの統計と並べます。
定着を進める取り組み 厚生労働省の資料にあること
厚生労働省は、人材確保には「魅力ある職場づくり」で、採用と定着を向上させることが大切だとしています。魅力ある職場とは、従業員から見て「働きがい」と「働きやすさ」を感じられる職場のことです。これを、事業所の特性に合わせて、人材マネジメントの面から進めることを「雇用管理改善」と呼んでいます。
相談と情報の窓口は、次のとおりです。
- 雇用管理改善等コンサルタント: 人事管理制度、賃金体系、教育訓練、福利厚生、職場のコミュニケーション管理、業務管理の相談を受けます。各都道府県労働局に置かれています。
- 働き方改革推進支援センター: 長時間労働の削減や同一労働同一賃金などの相談・コンサルティングを、無料で行います。
- 働き方・休み方改善ポータルサイト: 自社の働き方・休み方の見直しに役立つ情報を載せています。
- 若者雇用促進総合サイト: 若者の雇用管理が優良な中小企業(ユースエール認定企業)の取り組みなどを載せています。
- 助成金: 人材確保等支援助成金(魅力ある職場づくりのための労働環境の向上)、働き方改革推進支援助成金、両立支援等助成金、キャリアアップ助成金などが紹介されています。制度の内容と申請の条件は、年度で変わるため、厚生労働省と労働局の最新のページで確かめてください。
若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業は、厚生労働大臣の「ユースエール認定」を受けられます。認定企業は、ハローワークでの重点的なPRや、認定マークの使用などの支援を受けられます。
同じページには、「若者が定着する職場づくり取組事例集」などの事例集も掲載されています。平成25年度から30年度に作られたものが中心なので、古い制度の内容が含まれる点に注意します。
離職率を下げることだけを目標にすると、辞めたい人を引き留める運用になりかねません。まず離職率の中身(定年・契約期間の満了、個人的理由、事業所側の理由)を分け、避けられる離職がどれくらいあるかを見ます。
有給休暇の取得状況は、有給休暇の取得率 業種別・規模別のデータと平均取得日数 令和7年就労条件総合調査で、業種ごとの給与と残業時間は、業種別の給与と残業時間 毎月勤労統計で比べる2025年の数字と読み方でまとめています。退職が決まった社員への手続きは、退職の手続き 会社側のチェックリスト 保険・離職票・貸与品と期限を使ってください。
今日からできること
- 直近1年の自社の離職者数と入職者数を、期首の常用労働者数で割り、離職率・入職率・入職超過率を出す。
- 一般労働者とパートタイム労働者に分けて、同じ区分の産業別の数字(上の表)と並べる。
- 離職者を、定年・契約期間の満了、個人的理由、事業所側の理由に分け、避けられた可能性のある離職を人事で確かめる。
- 退職面談や退職時のアンケートで、辞める理由を聞く項目を決めておく。
- 社内の資料には、調査名・調査年・分母の時点・対象の範囲を書き添える。
この記事の数字は、2026年10月20日に厚生労働省の「令和7年雇用動向調査結果の概況」と、e-Statの統計表で確かめたものです。令和8年調査の結果が公表されたら、厚生労働省の「雇用動向調査」のページで最新の数字を確かめてください。