育休明けの面談で、時短や残業のことを切り出したら「わがまま」と思われないか。言い方を何度も考え直していませんか。
でも、短時間勤務や残業の免除は、子どもの年齢に合っていれば、申し出て使える制度です。時短は会社が必ず用意しておくもので、残業の免除も、請求があれば会社は原則として断れません。だから、面談で話すのは「使っていいか」ではなく、どの形で使い、どの仕事を受け持つかのほうです。
申し出れば使える制度は、子の年齢で決まる
育休明けに使える制度は、子どもが何歳かで入れ替わります。1歳、2歳、3歳、そして小学校の入学。誕生日や入学をまたぐたびに、使えるものが変わっていくのです。
子の年齢で入れ替わる、育休明けに使える制度の早見表(2026年10月時点)作成: 編集部 / 出典: 育児・介護休業法・同法施行規則・指針、労働基準法、厚生労働省の資料
| 制度 |
使える子の年齢 |
会社の立場 |
申し出の時期 |
| 育児時間(1日2回、各30分以上) |
1歳になるまで(女性) |
請求されたら与える |
会社の手続きによる |
| 短時間勤務(1日6時間の形を含む) |
3歳になるまで |
用意する義務 |
会社の規則による |
| 育児時短就業給付(時短中の賃金の10%) |
2歳になるまで |
雇用保険から出る |
時短を始めた月の初日から4か月以内に会社が申請 |
| 残業の免除(所定外労働の制限) |
小学校に入るまで |
原則として断れない |
始める日の1か月前まで |
| 残業の上限(月24時間、年150時間) |
小学校に入るまで |
原則として断れない |
始める日の1か月前まで |
| 深夜業の制限(22時から5時) |
小学校に入るまで |
原則として断れない |
始める日の1か月前まで |
| 子の看護等休暇(年5日、2人以上は10日) |
小学3年生の修了まで |
断れない |
当日の電話でもよい |
| テレワーク |
3歳になるまで |
努力義務 |
会社の制度による |
| 柔軟な働き方を実現するための措置 |
3歳から小学校に入るまで |
2つ以上を用意する義務 |
会社の規則による |
表でまず見ておきたいのは、残業の免除の行です。2025年4月から、対象が「3歳になるまで」から「小学校に入るまで」に広がりました。請求は始める日の1か月前までで、1回ごとに1か月から1年の期間を決めて出します。何度でも出し直せます。1
会社が断れるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」だけです。国がまとめた「育児・介護休業法のあらまし」には、「単に所定外労働が事業の運営上必要であるとの理由だけでは拒むことは許されない」とあります。忙しいから、というだけでは断る理由にならないわけです。
時短は3歳になるまでの子を育てる人のための制度で、会社は就業規則に用意しておかなければなりません。中身には、1日の所定労働時間を原則6時間にする形が必ず入ります。2ただし、もともと1日6時間以下で働いている人は対象外。勤めて1年に満たない人や、週に2日以下しか働かない人も、労使協定で外されることがあります。仕事の性質から時短がむずかしいとして外された人には、会社が代わりに、テレワークや始業時刻の変更などを用意します。
子の看護等休暇も、2025年4月に広がりました。使えるのは小学3年生が終わるまで。病気やけが、予防接種や健康診断に加えて、感染症で学級閉鎖になったときや、入園式、卒園式、入学式の日にも使えるようになりました。3日数は1年に5日、子どもが2人以上なら10日で、時間単位でも取れます。
1歳になる前に戻る人は、労働基準法の育児時間も請求できます。休憩とは別に、1日2回、それぞれ30分以上を、子どもを育てるための時間にあてられる決まりです。4
一方で、会社によって中身が変わるものもあります。たとえば、3歳になるまでのテレワークは、2025年4月から会社の努力義務になりました。義務ではないので、使えるかどうかは会社の制度しだいです。5
3歳から小学校に入るまでは、2025年10月に新しい仕組みが始まりました。会社は次の5つから2つ以上を選んで用意し、働く人はその中から1つを選んで使います。6
- 始業や終業の時刻を変える(フレックスタイム制や時差出勤)
- 月10日以上のテレワーク
- 保育施設の設置や、ベビーシッターの手配と費用の負担など
- 年10日以上の養育両立支援休暇
- 短時間勤務
仕事に戻る日、お子さんは何歳何か月になりますか。表の「使える子の年齢」に当てはめてみると、申し出れば使える話と、会社と相談して決める話が分かれてきます。
復帰の2か月前から始める段取り
復帰の前の晩、手帳に面談で話すことを書き出すイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
希望を話す前にそろえておきたいのは、日付です。入園日と送り迎えの時刻が決まらないと、働ける時間も決まりません。戻る日の2か月前を目安に、次の順で進めておくと、面談で迷わずに話せます。
- 保育園に、入園日と慣らし保育の予定を聞く。
- 送りと迎えの時刻から、始業と終業の時刻を逆算する。
- 就業規則の育児の章を開き、短時間勤務で選べる時間と、申し出の期限を確認する。
- 同じ章で、子の看護等休暇が有給か無給かを見ておく。
- 子どもが熱を出した日に、だれが迎えに行くかを家族と決める。
- 上司か人事に、面談の日程をお願いする。
入園の日から仕事に戻る日までが、そのまま慣らし保育にあてられる日数です。厚生労働省の「育休復帰支援プラン策定マニュアル」は、登園し始めたころを「子どもが体調を崩しやすく、保育所からの呼び出しなども比較的高い頻度で発生する可能性がある時期」と書きます。同じページには、この時期に配偶者が育休を取る例もあります。戻る日を少し後ろにずらすか、家族で時期を分けるか。早めに話し合っておけば、入園の週を落ち着いて迎えられます。
見落としやすいのは、4つ目の有給か無給かです。国の指針によれば、子の看護等休暇を取った日に賃金を払わなくても、不利益な取扱いには当たりません。7つまり、無給の会社もありうるので、年次有給休暇とどちらを使うかを先に考えておけます。
会社から面談の声がかからないこともあるでしょう。法律で会社に面談などが義務づけられているのは、妊娠や出産を申し出たときと、子どもが3歳の誕生日を迎える1か月前までの1年間だけ。8育休から戻るときの面談は、指針が「望ましい」としているだけです。9
声がかからなければ、こちらからお願いすればいいのです。残業の免除は始める日の1か月前までに請求するので、面談の日をそれより前にしておけば、請求にも間に合います。
面談で確認したい7つのこと
戻る2か月前から2か月後まで、面談で確認することと人事に頼む手続き作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「育休復帰支援面談シート」「育休復帰支援プラン策定マニュアル」
厚生労働省の「育休復帰支援面談シート」を見ると、休みが終わる1〜2か月前に聞く項目は、働く時間の希望や残業のこと、出張や遠くへの外出、戻ってからの仕事の中身や役割の分け方などです。戻る側から並べ直すと、確認したいことは次の7つになります。
7つのうち、聞きにくいのに、あとから効いてくるのは最後の2つです。
まず、担当する仕事です。国の指針は会社に、育休のあとは「原則として原職又は原職相当職に復帰させるよう配慮すること」を求めます。10元の席に戻れるとは限りませんが、まったく違う仕事になるなら、理由を聞いてかまいません。部署を変わりたい気持ちがあるなら、異動希望の出し方と理由の書き方、社内公募と自己申告で変わる上司に話す順番で、家庭の事情の伝え方も扱っています。
先ほどのマニュアルには、会社向けに、こんな一文もあります。「短時間勤務だからといって、本人の役割に見合わないような軽易な仕事を配分してしまうと、モチベーションを低下させてしまう可能性があります」。時間は短くしても、任される範囲は前と同じでいたい。そう考えているなら、面談でそのまま言葉にしてかまいません。
次に、評価です。指針には、はっきりした線があります。休んだ期間や短くした時間の分を「働かなかった」として、賞与や退職金の計算から日割りで差し引くのは、不利益な取扱いに当たりません。けれど、その分を超えて減らすのは不利益な算定です。育休を取った人を、休んだ期間を超えて昇進や昇格の選考から外す評価の仕組みも、不利益な評価に当たります。11
面談で「時短のあいだの目標は、時間に合わせてどう決めますか」と聞いておけば、半年後の評価面談で戸惑わずに済むはずです。
人事には、お金の手続きも頼んでおきます。
- 時短で給与が下がるなら、育児休業等終了時報酬月額変更届を出してもらう
- 将来の年金を子どもが生まれる前の標準報酬月額で計算する、養育期間標準報酬月額特例申出書を出してもらう
- 2歳未満の子のために時短で働くなら、育児時短就業給付の申請を頼む
1つ目と2つ目は、本人が申し出て、会社が出す書類です。月額変更届を出すと、条件に合えば、戻った月から3か月の給与の平均で、4か月目から社会保険料が見直されます。育児時短就業給付は、時短中に払われた賃金の10%が基本。ハローワークの案内にある例だと、時短前の賃金月額が30万円で、時短中が20万円なら、給付は2万円です。時短中の賃金が時短前の90%を超える月は率が下がり、時短前と同じかそれ以上なら出ません。会社の側の書類の流れは、産休・育休の手続き 妊娠の報告から復帰まで、いつ何を出すかで詳しく説明しています。
希望は「いつまで」を添えて伝える
希望は制度の名前と期間をセットで伝えると、上司が手配を始めやすくなります。たとえば、「時短にしたいです」より「4月から9月まで、9時から16時の短時間勤務にしたいです」。こう言われれば、上司は仕事の割り振りをすぐに考え始められます。
まだ決められないことは、決められないと伝えてかまいません。保育園の結果待ちや、慣らし保育の進み具合などです。いつ決まるかと、決まったらいつ連絡するかを添えておけば、相手はそれだけで予定を組めます。
フルタイムで戻りたい人も、遠慮はいりません。本人の希望より長く、意に反して残業の免除や時短を当てはめるのも、指針では不利益な取扱いです。11
文例の言い回しはそのまま使わなくてかまいません。外せないのは、日付と期間の2つだけです。
戻ってからの3か月で、仕事を少しずつ戻す
戻ってすぐの数週間は、仕事より先に、生活の時間割が変わります。最初から休む前と同じ量を抱えるより、急に抜けても止まらない形で仕事を持つほうが、結果として早く元のペースに戻れるでしょう。
最初の2週間は、休んでいる間に変わったことを拾う時間にあてます。使うシステムやツール、チームの顔ぶれ、社内の決まり。変わったものを一覧にして、上司か引き継いでくれた人と15分だけ見合わせると、聞き漏れが減ります。
1か月目からは、自分の仕事の進み具合を、ほかの人が見て分かる場所に置きましょう。共有フォルダに進行表を置く、チャットの決まった場所に毎日1行残す、といった形です。マニュアルにも、担当者にしか進み具合が分からないと、子どもの体調で急に休むときに困る、という指摘があります。急な早退の日に周りが動けるかどうかは、ここでかなり変わってきます。
2か月たったら、短い振り返りの場をお願いします。面談シートにも、会社に向けた「復帰から2か月経ったら、復帰後の就業状況について本人と話し合いましょう」という一行があります。時短の時間帯は合っているか。任された量はどうか。残業の免除は1回が1年以内なので、続けるなら次の請求の時期もここで決められます。
働き方は、子の誕生日ごとに選び直せる
決めた働き方は一度で終わりではありません。2歳になると時短の給付が終わり、3歳になると会社の時短の義務がなくなります。そのかわり、3歳の誕生日を迎える前の1年間に、会社は柔軟な働き方の措置を一人ずつ知らせ、どれを使いたいかを聞かなければなりません。8
指針は、育児のあいだは「キャリア形成に対する考え方等が変化する場合がある」として、育休から戻るときや時短の期間中にも、定期的に面談するのが望ましいとしています。9途中で考えが変わることは、はじめから見込まれているのです。
復帰前の面談は、お願いをしに行く場ではありません。この先1年の仕事の段取りを、上司と一緒に組む最初の打ち合わせです。7つの答えをメモにそろえたら、まずは日程のお願いを1通、送ってみてください。
この記事の制度は、2026年10月30日時点の法令と、厚生労働省や日本年金機構の資料で確認したものです。自分の会社の決まりは、就業規則で見られます。迷ったら、まずは人事へ。法律の考え方で迷うときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や社会保険労務士に相談してください。