宴会の予約で埋まった12月の夜でも、休憩を全員そろって取る必要はありません。飲食店は、休憩を一人ずつずらして取ってよい業種です。1
ただ、休憩の長さと1日8時間の線、そして18歳未満が上がる22時は、どんなに忙しくても動きません。この3つをシフト表を組む段階で書き込んでおけば、宴会が延びた夜に、ホールであわてずにすみます。
休憩は、宴会のピークの外に交代で
営業前のバックヤードで、店長が12月のシフト表を確認する場面イラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
休憩の長さは、その日の実働で決まります。6時間を超える日は45分以上、8時間を超える日は1時間以上を、勤務の途中に入れる決まりです。2アルバイトもパートも、社員と同じ線で数えます。
「全員で休んだら、店が回らない」。そう思いますよね。でも、休憩を一斉に与える決まりには例外があり、飲食店はその中に入っています。労使協定がなくても、ピークを外して一人ずつ休んでもらえばいいのです。
分けて取ってもかまいません。厚生労働省のシフト制の留意事項にも、「休憩時間は必ずしも連続して与える必要はありません」とあります。たとえば、宴会の前に30分、片づけの合間に15分。そんな組み方もできます。
ただし、呼ばれたらすぐ戻る前提の時間は、休憩になりません。同じ留意事項によると、休憩時間とは「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」のこと。いつ仕事を頼まれるか分からないまま待つ「手待時間」は、休憩に当たらないのです。休憩中に予約の電話を取ったり、お客さんの応対をしたりした分も、休憩から外して数えます。
勤務の終わりにまとめて取る形も、法律の休憩にはなりません。最後の30分を休憩にして早く帰ってもらうのではなく、途中に入れます。休憩の時間は、本人が自由に使えるようにしておく決まりもあります。3
宴会の日のシフトを、5人の例で組んでみました。17時に開店し、24時までに片づけを終える店で、18時30分から21時が宴会のピークという想定です。
宴会の日の5人のシフト例と、休憩になる時間・ならない時間作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省・e-Gov法令検索
| 人 |
時間帯 |
休憩 |
実働 |
22時以降 |
| 社員A |
15時〜24時 |
16時〜17時の1時間 |
8時間 |
2時間 |
| パートB |
16時〜21時 |
なし |
5時間 |
なし |
| 大学生C |
17時〜24時 |
17時30分〜18時と21時15分〜21時30分の計45分 |
6時間15分 |
2時間 |
| 高校生D(17歳) |
17時〜22時(21時45分から着替え) |
なし |
5時間 |
なし |
| 大学生E |
18時〜24時 |
なし |
6時間 |
2時間 |
ピークの時間に、休憩が一つも重なっていない。ここがこの組み方の要です。気をつけたいのは大学生Eのほうで、6時間ちょうどなので休憩は要りませんが、宴会が延びて6時間を少しでも超えると、45分の休憩が必要になります。
10人未満の店は、週44時間まで
ふだん働いている人が10人に満たない飲食店なら、週の法定労働時間は40時間ではなく44時間です。4飲食店や旅館などに認められた特例で、人数はお店ごとに、アルバイトも入れて数えます。1日8時間の線は、どの店でも同じです。
12月に気をつけたいのは、1日の時間は守っているのに、週に入る日がふえていく形です。1日7時間で週6日入ってもらうと、週42時間。10人以上の店では、超えた2時間が時間外労働になり、割増賃金が要ります。10人未満の店なら、44時間の内側に収まります。休日も、毎週1日か、4週間で4日以上は入れておきます。5
ただし、18歳未満の人にはこの特例が使えません。617歳の高校生なら、週の上限は40時間のままです。
12月だけ長い日を作りたいなら、1か月単位の変形労働時間制を使う手もあります。1か月をならして週40時間(10人未満の店は44時間)に収まれば、前もって決めた日は8時間を超えて組めるのです。731日ある12月なら、月の合計の上限は177.1時間、10人未満の店で194.8時間です。8
ただ、思い立ってすぐに使えるものではありません。就業規則か労使協定で決めておき、日ごとの時間も、あらかじめシフト表に書いておく必要があります。同じ留意事項も、シフト制の人に使うなら、労働日と日ごとの労働時間を具体的に決めてからシフト表を作るよう書いています。12月から使うつもりなら、準備は11月のうちに。
宴会が延びたら、まず8時間の線を見る
ラストオーダーを過ぎても、宴会がなかなか終わらない。「あと1時間、残れる?」と声をかける前に見ておきたいのは、その人の今日の実働が8時間を超えるかどうかです。
1日8時間か、週40時間(10人未満の店は44時間)を超えて働いてもらうには、36協定を結び、労働基準監督署に届け出ておく必要があります。9届け出ていなければ、延ばせるのは8時間の内側まで。協定があっても、延ばせる時間は原則として月45時間、年360時間の範囲で決めます。協定の中身は、36協定の書き方と届け出で詳しく説明しています。
延ばすときは、先に本人の了解をもらいます。決まったシフトの時間を変えるのは、労働条件の変更に当たるからです。10留意事項も、確定した労働日や労働時間の変更は「使用者及び労働者双方が合意した上で行うようにしてください」と求めています。
延ばしたときのお金も、先に計算しておくとあわてません。時給1,200円の大学生に14時から23時まで(休憩1時間・実働8時間)入ってもらい、宴会が延びて24時まで残ってもらった日で見てみます。
- 9時間分の時給は、1,200円×9時間で10,800円です。
- 22時から23時は深夜なので、25%の300円を足します。
- 23時から24時は8時間を超えた時間外で、しかも深夜です。50%の600円を足します。
- 合計は11,700円。予定どおり23時に上がった日の9,900円より、1,800円多くなります。
つまり、延びた1時間には時給の1.5倍がかかります。11月給の人の1時間あたりの賃金の出し方や、月60時間を超えたときの率は、割増賃金とはにまとめました。
延ばすと、休憩が足りなくなることもあります。休憩45分で実働7時間30分の予定だった人が、延びて8時間を超えたら、あと15分の休憩を途中に足さないといけません。だから延長を頼むときは、延ばす時間と一緒に、休憩を足すかどうかも決めておきます。
18歳未満は、着替えまで22時に終える
18歳未満の人に、22時から翌朝5時まで働いてもらうことはできません。1236協定があっても時間外労働は頼めず、上限は1日8時間、週40時間です。6厚生労働省のサイト「確かめよう労働条件」も、18歳未満の人には「深夜労働も残業(1日8時間を超えて働くこと)もさせることができない」と説明しています。
迷いやすいのは、22時の線をどこで引くかです。店が制服への着替えを決めているなら、着替えも労働時間に入ります。厚生労働省のガイドラインは、指示された服装への着替えや、仕事のあとの清掃などの後片づけを、労働時間として扱う例に挙げています。22時に上がる高校生には、21時45分にはホールを離れてもらう。そうすれば、着替えまでが22時に収まります。
線を引くのは、学年ではなく年齢です。山梨労働局のQ&Aによると、高校3年生でも満18歳になれば年少者には当たりません。反対に、高校に通っていなくても17歳なら22時まで。12月のシフトを組む前に、一人ひとりの誕生日を見ておくと安心です。
18歳未満の人を雇うなら、年齢を証明する書類を店に置いておく決まりもあります。13同じQ&Aによると、住民票記載事項証明書などでかまいません。
うっかり22時を過ぎて働かせてしまった時間にも、深夜の割増賃金は払います。厚生労働省のQ&Aは、深夜業を禁止されている年少者に違法な深夜労働をさせた場合でも、深夜の割増賃金は支払わなければならないとしています。
働ける時間の線を、年齢とお店の人数で並べてみました。
年齢と店の人数で変わる働ける時間の線と、延長したときの賃金の例作成: 編集部 / 出典: e-Gov法令検索・厚生労働省
|
18歳以上(10人以上の店) |
18歳以上(10人未満の店) |
18歳未満 |
| 1日の法定労働時間 |
8時間 |
8時間 |
8時間 |
| 1週の法定労働時間 |
40時間 |
44時間 |
40時間 |
| 36協定での時間外労働 |
できる |
できる |
できない |
| 22時から5時 |
25%以上の割増 |
25%以上の割増 |
働かせられない |
| 休憩 |
6時間超で45分、8時間超で1時間 |
同じ |
同じ |
見落としやすいのは右の列でしょう。10人未満の店でも、18歳未満の人だけは週40時間で数えます。年末だけ来てもらう短期のアルバイトの契約書や社会保険は、短期アルバイトの雇用契約書と社会保険で扱っています。
退勤の時刻は、片づけの終わりで記録する
片づけが長引いた夜、タイムカードの時刻を予定の24時に直していませんか。労働時間の記録は、店の側の仕事です。同じガイドラインは、働く日ごとに始業と終業の時刻を確認し、記録するよう使用者に求めています。やり方は、自分の目で見て確認するか、タイムカードなどの客観的な記録をもとにするのが原則です。
自己申告で記録する店は、とくに気をつけたいところ。ガイドラインは、申告できる時間外労働に上限を設けて、それを超える申告を認めないような扱いを禁じています。高校生向けのQ&Aでも、厚生労働省は「毎回15分未満は切り捨て」のような扱いを、原則として法律違反だと書いています。
記録は、とっておく期間も決まっています。出勤簿やタイムカードも入れて、5年間、当分のあいだは3年間とっておきます。14賃金台帳には、一人ひとりの労働時間数と、時間外・休日・深夜の時間数を書く欄があります。1512月の深夜の時間は、ここにそのまま出てきます。
店長の時間も、時給に直してみる
店長だから残業代は出ない、とは限りません。管理監督者に当たるかどうかは、役職の名前ではなく、仕事の中身と権限、働き方、待遇で決まります。16厚生労働省は2008年、チェーン店の店長について、管理監督者に当たらないと判断する要素を通達にまとめました。
通達には、アルバイトを採る権限が実際にはない、勤務割表を作ったり残業を命じたりする権限がない、といった項目が並びます。目を引くのは時間単価の項目です。長く働いた結果、時間に直した賃金が店のアルバイトの時給に届かないなら、管理監督者を否定する「重要な要素」とされています。
12月が終わったら、自分の月の給与を、その月に働いた時間で割ってみてください。アルバイトの時給と並べてみると、自分の働き方を数字で話せるようになります。なお同じ通達によれば、管理監督者でも、深夜業の割増賃金を払うために、労働時間の把握や管理を受けることはあります。
シフトを動かすお願いは、文で残す
宴会のキャンセルで、確定したシフトを減らしたい日もあるでしょう。減らすときも、延ばすときと同じで本人の合意が要ります。しかも、店の側の事情で休んでもらう日は、平均賃金の6割以上の休業手当が必要になる場合があります。17留意事項によると、休業手当の要る「使用者の責に帰すべき事由」には、使用者の側に起因する経営や管理上の障害も含まれます。
延ばすのも減らすのも、頼んだ日時と返事を文で残しておけば、あとで言った言わないにならずにすみます。シフトの希望を聞くときから、決めたことを文で送っておくと楽です。
12月のシフト表を出す前の確認表
1月に、12月の記録を数字で見返す
年が明けたら、12月のタイムカードと賃金台帳を並べて、一人ひとりの時間外と深夜の時間、休憩がずれ込んだ日を数えてみてください。どの曜日のどの時間帯に人が足りなかったかが、見えてきます。
「宴会の日に、あと1人いれば休憩をピークの外に回せた」。そう数字で言えれば、来年の人員の相談も、本部や経営者に通しやすくなります。忙しい月を乗り切った記録は、次にシフトを組む人へそのまま引き継げる、あなたの仕事の成果です。
ここで紹介した決まりは2026年10月29日現在のもので、労働基準法とその施行規則、厚生労働省の資料で確認しました。自分のお店の場合に迷うときは、社会保険労務士や、お店のある地域の労働基準監督署に相談してください。