機密書類は、シュレッダーでも溶解処理でも、元に戻せない方法で捨てれば足ります。個人情報保護委員会のガイドラインは、書類を廃棄する方法の例に、焼却、溶解、適切なシュレッダー処理を挙げています。1
では、どちらを選ぶか。分かれ目は、捨てる量と、あとに残る記録です。年末の片づけで棚から書類の山が出てきたら、箱に詰める前に、この2つを見ておきたいところです。
元に戻せない方法なら、シュレッダーも溶解も使える
書類の箱に封をして、台車に載せる準備をする総務イラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
個人情報保護法のガイドライン(通則編)が求めているのは、手段の名前ではなく、復元できないことです。個人データが書かれた書類や機器を捨てるときは、復元不可能な手段で行います。あわせて、捨てた記録を残すこと、作業を業者に頼んだときは、確実に捨てたことを証明書などで確認することも挙げています。
マイナンバーが書かれた書類には、もう少し具体的な例があります。特定個人情報のガイドラインは、焼却、溶解、復元できない程度に細断できるシュレッダー、番号の部分のマスキングを、廃棄の方法の例にしています。2
なお、「機密書類」という言葉は、2つのガイドラインには出てきません。対象にしているのは、個人データとマイナンバーです。取引先との契約書や社内の資料は、その範囲に入るとは限りませんが、同じ方法で捨てておけば、社内で迷わずに済みます。
方法ごとの違いを、表にしました。量の欄は、ガイドラインに書かれた基準ではなく、編集部の目安です。
| 方法 |
誰が行うか |
向いている量の目安 |
記録の残り方 |
気をつけること |
| シュレッダー |
社内 |
毎日出る少量 |
社内の廃棄記録だけ |
細断の細かさは機種で違うので、仕様を見る |
| 溶解処理 |
業者 |
箱で数える量 |
廃棄証明書と社内の記録 |
渡してから処理までの、運搬と保管の管理 |
| 焼却 |
業者 |
箱で数える量 |
廃棄証明書と社内の記録 |
業者がどの処理をするかを、見積もりで聞く |
| マスキング |
社内 |
保存を続ける書類 |
社内の記録 |
番号の部分を、復元できない程度に隠す |
シュレッダー・溶解処理・焼却・マスキングの違いと、選ぶ順番作成: 編集部 / 出典: 個人情報保護委員会 個人情報保護法ガイドライン(通則編)・特定個人情報ガイドライン(事業者編)
見落としやすいのは、手軽なシュレッダーのほうが、記録が弱くなりやすいことです。業者に頼めば廃棄証明書という紙が届きますが、社内で細断すると、残るのは自分で書いた記録だけになります。そのぶん、日付と量と確認した人は、細断したその日のうちに書いておくと安心です。
仕分けは、箱に入れる前に済ませる
捨てる前に、まず保存期間が過ぎているかを見ます。法律で残す年数が決まっている書類は、細断したあとでは戻せません。年数の一覧は書類の保存期間にまとめています。
捨ててよいと決まった書類は、箱に入れる前に、次の3つに分けておくと、あとの段取りが楽になります。分け方は編集部の例なので、社内に情報管理の規程があれば、そちらに合わせてください。
- 個人情報やマイナンバーが書かれた書類。履歴書や応募書類、給与や社会保険の書類、顧客名簿の出力などです。
- 取引先との契約や価格が分かる書類と、社外に出せない社内資料。
- 外に出ても困らない書類。公開済みのパンフレットや、使い終わった案内などです。
1つ目と2つ目は、溶解かシュレッダーで捨て、記録を残します。3つ目は、自治体の分別に従って古紙などに出します。マイナンバーが書かれた書類は、保存期間が過ぎたら、できるだけ速やかに廃棄するよう求められています。数え方と廃棄できる日は、マイナンバーの管理で説明しました。
箱の底に、USBメモリやCDが混ざっていませんか。記録媒体は、紙とは別の方法で捨てます。ガイドラインの例は、データを消す専用のソフトウェアを使うか、物理的に壊す方法です。大掃除のなかでの扱いは、オフィスの大掃除の段取りにも書きました。
量を数えて、社内で終わる分を決める
仕分けが終わったら、箱を数えます。そして、1箱分を試しにシュレッダーにかけて、かかった時間を計ってみてください。その時間に箱の数を掛ければ、社内で終わるのか、業者に頼むのかが見えてきます。
毎日の少量は社内のシュレッダー、年に一度の山は業者の溶解処理、という二段構えにしている会社もあるでしょう。全部を業者に任せたほうが安心に思えるかもしれません。ただ、書類を会社の外に出すと、渡してから処理されるまでの管理を、会社が見届けることになります。社内で終わる量なら、その手間がありません。
社内で細断するなら、細断した人と、終わったことを確認する人を分けておきます。ガイドラインは、中小規模事業者の例として、削除や廃棄を責任ある立場の人が確認することを挙げています。
溶解処理を頼む段取り
溶解処理を頼む7つの段取りと、見積もりで聞く項目、廃棄証明書の確認項目作成: 編集部 / 出典: 個人情報保護委員会 ガイドライン(通則編)・特定個人情報ガイドライン(事業者編)
業者に頼むときの考え方は、通則編の委託先の監督が参考になります。委託先を選ぶこと、契約を結ぶこと、委託先の取扱状況を把握すること。この3つです。3書類の廃棄でも、この3つに沿って見積もりと契約を見ておくと、抜けが出にくくなります。
- 箱の数を数え、紙以外が混ざっていないか見る。
- 自治体の案内で、会社の紙くずの区分と、頼める業者の条件を見る。
- 同じ条件で、2〜3社に見積もりを頼む。
- 返ってきた答えを、下の表の項目で比べる。
- 契約や注文の書面に、秘密保持、再委託の条件、廃棄証明書の発行を入れてもらう。
- 回収の日に、箱の数を業者と一緒に数え、受け取りの控えをもらう。
- 処理が終わったら廃棄証明書を受け取り、社内の台帳に結ぶ。
料金は、量と回収の方法で変わります。そのため、この記事に金額は載せません。同じ条件で見積もりを出してもらい、料金の決まり方で比べるのが近道です。
| 見積もりで見る項目 |
聞くこと |
見る理由 |
| 料金の決まり方 |
箱の数か重さか。最低料金はあるか。回収の費用は別か |
同じ量でも、決まり方で総額が変わる |
| 回収の方法 |
取りに来るか、持ち込みか。箱の貸し出しや、鍵と封はあるか |
渡す前後の管理が違う |
| 処理の方法と場所 |
溶解、細断、焼却のどれか。どこで、いつ行うか |
ガイドラインの例のうち、どれに当たるかが分かる |
| 立会いと記録 |
処理に立ち会えるか。写真や映像などの記録は出るか |
あとから示せる材料が増える |
| 再委託 |
別の会社に回すことはあるか。あるなら事前に連絡があるか |
再委託先の取扱いも、委託元が監督する対象になる |
| 受け入れの条件 |
金属のクリップやファイル、記録媒体は出せるか |
出す前の準備が変わる |
| 廃棄証明書 |
発行されるか。いつ、どんな形か。何が書かれるか |
次の節で見る |
表のなかでは、再委託が見落とされやすい項目です。通則編は、委託先が再委託をするときは、委託元が相手方や業務の内容について、事前に報告を受けるか承認することが望ましいとしています。さらに、委託元が必要な監督をしていないときに、再委託先が不適切な取扱いをすると、元の委託元の法違反と判断されることもあるとしています。4
契約の書面については、特定個人情報のガイドラインが、盛り込む内容を挙げています。秘密保持、再委託の条件、漏えいが起きたときの委託先の責任、契約が終わったあとの返却か廃棄などです。5溶解の依頼でも、注文書や見積書に、この内容が書かれているかを見ておきます。
廃棄証明書に書かれている項目と、社内の記録
廃棄証明書は、書類を渡した側が、確実に捨てられたことを示す紙です。ガイドラインは、通則編も特定個人情報のガイドラインも、「証明書等」で確認するとだけ書き、様式や項目は決めていません。業者ごとに書き方が違うので、届いた証明書に、次の項目が書かれているかを見ます。項目は一例です。
証明書は、それだけで足りるわけではありません。通則編は、記録の例として、データベースなどの削除や廃棄の状況を挙げ、そこに委託した場合の消去や廃棄を証明する記録を含めています。6つまり、証明書は社内の記録の一部として、保管するものです。
社内の記録は、社内で細断した分も含めて、1冊の台帳にそろえます。書く項目の例は、次のとおりです。
| 廃棄した日 |
書類の名前と年度 |
量 |
方法 |
実施した人 |
確認した人 |
証明書の番号 |
| 12月〇日 |
〇〇の書類 〇年度分 |
箱〇つ |
溶解(業者に委託) |
総務担当 |
総務の責任者 |
〇〇 |
| 12月〇日 |
〇〇の書類 〇年度分 |
約〇枚 |
シュレッダー(社内) |
総務担当 |
総務の責任者 |
なし |
保管の場所は、廃棄する書類の台帳と同じ場所にします。箱のラベルの番号と、証明書の番号を結んでおくと、あとから「この箱はいつ、どこで処理されたか」をたどれます。台帳の作り方は書類の保存期間の段取りと同じ形です。
証明書や記録を、何年残すか。ガイドラインに年数は書かれていません。社内の文書管理の規程に書いて、決めておきます。会社の事情に合う年数は、顧問の弁護士や社会保険労務士に相談する方法もあります。
紙くずの扱いは、自治体の案内で見る
書類を捨てる作業は、廃棄物処理法の対象にもなります。この法律は、事業者に、事業活動に伴って出た廃棄物を、自分の責任で適正に処理するよう求めています。7細断した紙くずも、業者に出す書類も、会社の事業活動から出たものです。
紙くずが産業廃棄物になるかどうかは、出した業種で決まります。政令が挙げているのは、建設業で工作物の新築、改築、除去に伴って出たもの、パルプや紙、紙加工品の製造業、新聞業のうち新聞巻取紙で印刷発行をするもの、出版業のうち印刷出版をするもの、製本業と印刷物加工業です。8
この業種に当たらない会社の紙くずは、産業廃棄物ではなく、一般廃棄物になります。法律が、一般廃棄物を産業廃棄物以外の廃棄物と定めているためです。9一般廃棄物の収集か運搬を業として行うには、市町村長の許可が要ります。ただし、事業者が自分で運ぶ場合や、専ら再生利用の目的の一般廃棄物だけを扱う者などは、許可の例外です。10産業廃棄物に当たるときは、運搬と処分を、許可を受けた業者などに委託します。11
どちらに当たるか、溶解の業者に頼めるのはどの区分か。その細かい扱いは、自治体の案内で見ます。業者には、許可の有無を聞いておくと安心です。
「いつ、誰が、どう捨てたか」に答えられる総務へ
シュレッダーか、溶解か。迷ったら、箱を数え、処理の時間を計り、記録の残し方まで決めてから選びます。
年末の片づけは、一日の作業です。けれど、廃棄の台帳と証明書は、次の年も、次の担当者のところに残ります。たとえば「去年の応募書類は、12月に箱3つ、溶解で処理しました」と、日付と数字で言えると、取引先や社内から聞かれたときに、頼りにされやすくなります。
この記事は、2026年10月28日時点の、個人情報保護委員会のガイドラインと、e-Gov法令検索の廃棄物処理法と同施行令をもとにしています。自社の紙くずの区分や、業者の許可は、自治体の窓口にも確認してください。