病気やけがで長く休むことになったら、まず確認したいのが傷病手当金です。会社の健康保険に入っている人が、仕事以外の病気やけがで働けず、給与が出ないときに受け取れます。
金額はふだんの給与のおよそ3分の2。休み始めて4日目から、通算で1年6か月まで受け取れます。お金の見通しが立てば、休むかどうかも決めやすくなりますよね。
受け取れるのは、4つの条件がそろったとき
休むときのお金の流れを、担当者に確認するイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
協会けんぽの案内では、条件は次の4つです。1
- 仕事以外の病気やけがの療養のために休んでいる。
- 仕事に就けない。
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかった。
- 休んだ期間に、給与の支払いがない。
自宅での療養も対象です。仕事に就けないかどうかは、医師の意見と仕事の内容をもとに判断されます。仕事中や通勤中のけがは労災保険の対象なので、ここには入りません。
体のけがだけの制度と思われがちですが、そうではありません。協会けんぽの調査では、女性の受給の原因で最も多いのは精神及び行動の障害で、42.68%でした。2心の不調で休むときにも、確認しておきたい制度です。
対象になるのは、健康保険に本人として入っている人です。パートでも、会社の健康保険に入っていれば含まれます。一方、家族の扶養に入っている人は対象外。自営業の人などの国民健康保険では、市町村や組合が条例などで定めたときだけの給付です。3
待期の3日は、続けて休んで成立する
いつからもらえるのかは、「待期」で決まります。休み始めから連続した3日間が待期で、支給は4日目からです。ポイントは2つあります。
待期には、有給休暇や土日、祝日も含まれます。給与が出たかどうかは関係ありません。つまり金曜から休めば、金土日で待期が成立し、月曜から支給の対象です。
もう1つは「連続」であること。2日休んで3日目に出勤すると、待期は成立しません。
傷病手当金の待期の数え方を、3つの休み方で比べる作成: 編集部 / 出典: 全国健康保険協会「傷病手当金」
有給休暇が残っていたら、どちらを使うか迷いますよね。有給休暇を使った日は給与が出るので、傷病手当金は支給されません。4ただ、支給期間は実際に支給された日を通算して数えるので、有給休暇を先に使っても1年6か月が減るわけではありません。給与の満額が出る有給休暇を先に使う人もいるでしょう。
金額は、標準報酬月額から計算する
1日あたりの額は、次の順に計算します。
- 支給開始日より前の12か月の標準報酬月額を平均する。
- その額を30で割り、10円未満を四捨五入する。
- 3分の2をかけて、1円未満を四捨五入する。
標準報酬月額は社会保険料を決めるための区切りのよい額です。会社の人事や総務に聞けば分かります。12か月ずっと同じだった場合の目安は、次のようになります。
| 標準報酬月額 |
1日あたり |
30日分 |
| 20万円 |
4,447円 |
133,410円 |
| 28万円 |
6,220円 |
186,600円 |
| 36万円 |
8,000円 |
240,000円 |
あなたの場合はどうでしょう。標準報酬月額が分かったら、この式に入れてみてください。加入して12か月に満たない人は、加入後の平均と32万円のうち低いほうで計算します。5
受け取った手当金に所得税や住民税はかかりません。6ただ、出ていくお金は続きます。病気で休んでいる間も社会保険料はかかり、産休や育休のような免除はありません。前の年の所得で決まる住民税も同じです。給与から引けない分をどう払うのかは、休む前に会社へ聞いておきましょう。
休んでいる日に給与が一部出るときは、手当金の額との差額が支給されます。健康保険組合に入っている人は、上乗せなど独自の決まりがあることも。保険証や資格確認書の発行元を確認してください。
申請は、1か月ごとに3者で記入する
申請書には、本人と会社、医師がそれぞれ記入します。協会けんぽは、給与の締め日ごとに1か月単位で申請することを勧めています。4
- 人事か総務に休むことを伝え、申請書の入手先と提出の方法を聞く。
- 休んだ期間が過ぎたら、診察のときに医師に療養担当者の欄を記入してもらう。
- 会社に、出勤の状況と給与の欄を記入してもらう。
- 自分の欄に、休んだ期間と振込先を記入する。
- 加入している協会けんぽの支部か健康保険組合に出す。
医師の欄は、ふつう過ぎた期間について記入してもらいます。だから最初の申請は、休み始めから少し時間がかかります。協会けんぽの場合、不備がなければ受付から10営業日以内の支払いです。受け取る権利は2年で時効になるので、7後回しにしすぎないようにしましょう。
傷病手当金の金額の計算と、申請に関わる人作成: 編集部 / 出典: 全国健康保険協会「傷病手当金」ほか
人事や総務の担当の人は、傷病手当金・出産手当金の事業主証明 会社が書くのは出勤日と払った賃金と休職の手続き 診断書が届いてから復職を決めるまで、人事が動く順番で、会社側の流れを確認できます。
期間は通算1年6か月、退職するなら注意
支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です。途中で復帰して支給がなかった日は数えないので、体調を見ながら働いた期間のぶん、後ろに延びます。
いちばん気をつけたいのは、休んだまま退職する場合です。退職後も続けて受け取るには、退職日までに1年以上続けて健康保険に入っていたことと、退職日の時点で受けているか受けられる状態にあることが要ります。8
退職日に出勤すると、この条件を満たさなくなります。挨拶や引き継ぎのつもりで顔を出す前に、確認してください。いったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても、支給は再開しません。
出産手当金と重なる期間は、出産手当金が優先です。
休む前に確認すること
体調がつらいときに全部を調べるのは大変です。分かるところだけ、人事に聞きながら進めましょう。
休むのは、キャリアが止まることではありません。お金の見通しが立っていれば、回復に時間を使えます。まず人事に、標準報酬月額を聞くところから始めてみてください。
記事の制度と数字は、2026年11月6日に協会けんぽの資料と法令で確認した内容です。健康保険組合に入っている人は、組合の案内も確認してください。