新卒の初任給は、毎年の採用で最初に決める給与です。厚生労働省は2026年3月24日、「令和7年賃金構造基本統計調査」の結果を公表し、新規学卒者の学歴別の賃金も出ました。この記事では、その数字を学歴別・規模別・産業別に読み、自社の水準を確かめる手順までをまとめます。
令和7年の初任給はいくらか 学歴別の平均と上がり幅
結論を先に表にします。2025年6月分の「新規学卒者の賃金」(所定内給与額)で、男女計は高校卒207.3千円、専門学校卒230.7千円、高専・短大卒235.5千円、大学卒262.3千円、大学院卒299.0千円でした。
| 学歴 |
令和7年(千円) |
令和6年(千円) |
上がり幅(円) |
前年比 |
| 高校 |
207.3 |
197.5 |
+9,800 |
+5.0% |
| 専門学校 |
230.7 |
222.8 |
+7,900 |
+3.5% |
| 高専・短大 |
235.5 |
223.9 |
+11,600 |
+5.2% |
| 大学 |
262.3 |
248.3 |
+14,000 |
+5.6% |
| 大学院 |
299.0 |
287.4 |
+11,600 |
+4.0% |
前年比は資料の値です。円の上がり幅は、千円単位で公表された令和7年と令和6年の差を編集部が計算したもので、100円単位です。
新規学卒者の初任給 学歴別と前年からの上がり幅(令和7年)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
男女別も見ます。男性は大学卒264.9千円、女性は259.7千円で、前年比は男性5.4%、女性6.0%でした。女性の大学卒は前年から14,800円上がり、差が縮まっています。
| 学歴 |
男(千円) |
男の前年比 |
女(千円) |
女の前年比 |
| 高校 |
210.1 |
+4.8%(+9,600円) |
202.9 |
+5.8%(+11,200円) |
| 専門学校 |
227.8 |
+3.9%(+8,500円) |
232.4 |
+3.4%(+7,600円) |
| 高専・短大 |
241.4 |
+4.5%(+10,400円) |
230.0 |
+4.0%(+8,900円) |
| 大学 |
264.9 |
+5.4%(+13,600円) |
259.7 |
+6.0%(+14,800円) |
| 大学院 |
301.2 |
+3.8%(+11,000円) |
292.9 |
+5.3%(+14,800円) |
出典は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第10表と、前年の「令和6年」の同じ表です。
数字の定義 何月分の何の金額か
自社と比べる前に、公式の定義を確かめます。ここを外すと、数千円から数万円の差を読み違えます。
| 項目 |
内容(公式の資料より) |
| 調査 |
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(統計法の基幹統計) |
| 時点 |
令和7(2025)年6月分の賃金(調査は7月) |
| 金額 |
所定内給与額。決まった条件で支給された給与から、時間外・深夜・休日・宿日直・交替手当の「超過労働給与額」を除き、所得税などを引く前の額 |
| 新規学卒者の賃金 |
新規学卒者の所定内給与額(通勤手当を含む) |
| 対象の事業所 |
この記事の数字は、10人以上の常用労働者を雇う民営事業所 |
| 企業規模 |
常用労働者1,000人以上を大企業、100〜999人を中企業、10〜99人を小企業 |
「初任給」と呼ばれる金額は、会社によって、基本給だけを指したり、手当を足した総支給額を指したりします。この統計は、通勤手当を含み、残業代を除いた額です。募集要項の「月給」と並べるときは、通勤手当と固定残業代を、統計の定義に合わせて足し引きします。
令和元年以前は別の統計
令和元年までは、事業所に「初任給額」と「採用人員」を尋ねる別の調査(賃金構造基本統計調査の初任給)でした。厚生労働省の注記では、その初任給額は所定内給与額から通勤手当を除き、調査年の初任給として確定したものです。令和2年からは、労働者ごとの「新規学卒者への該当性」で調べ、通勤手当を含みます。調査方法も定義も違うので、令和元年以前の数字と続けて比べません。 初任給の調査は令和元年調査で終了しています。
企業規模別の初任給 大企業と小企業の差
同じ学歴でも、企業の規模で初任給は違います。男女計の令和7年は次のとおりです。
| 学歴 |
規模計 |
大企業(1,000人以上) |
中企業(100〜999人) |
小企業(10〜99人) |
大と小の差 |
| 高校 |
207.3 |
216.5 |
202.2 |
199.9 |
16.6 |
| 専門学校 |
230.7 |
239.0 |
229.2 |
218.9 |
20.1 |
| 高専・短大 |
235.5 |
245.7 |
228.7 |
219.1 |
26.6 |
| 大学 |
262.3 |
273.4 |
254.1 |
242.4 |
31.0 |
| 大学院 |
299.0 |
308.1 |
285.1 |
272.1 |
36.0 |
単位は千円です。出典は、同調査の新規学卒者 第1表(e-Stat)です。
初任給の企業規模別比較(令和7年・男女計・千円)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」新規学卒者 第1表
大学卒では、大企業が規模計より11.1千円高く、小企業は19.9千円低くなっています。男女計の大学卒の人数は、規模計で約27万5千人と推計され、新規学卒者全体(約52万4千人)の過半です。人数は資料の「十人」単位の値を換算した編集部の計算です。
産業別の初任給 大学卒で上位と下位
産業別は、人数の多い大学卒で見ます。男女計の大学卒は、学術研究,専門・技術サービス業の290.1千円が最も高く、複合サービス事業の236.3千円が最も低い結果でした。差は53.8千円です。
| 順位 |
産業 |
大学卒の初任給(千円) |
| 上位1 |
学術研究,専門・技術サービス業 |
290.1 |
| 上位2 |
不動産業,物品賃貸業 |
271.2 |
| 上位3 |
医療,福祉 |
270.9 |
| 上位4 |
建設業 |
269.8 |
| 上位5 |
金融業,保険業 |
266.7 |
| 下位5 |
運輸業,郵便業 |
249.7 |
| 下位4 |
サービス業(他に分類されないもの) |
245.8 |
| 下位3 |
宿泊業,飲食サービス業 |
245.4 |
| 下位2 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
244.2 |
| 下位1 |
複合サービス事業 |
236.3 |
産業計は262.3千円です。情報通信業は260.4千円、製造業は257.5千円、卸売業,小売業は259.0千円でした。
大学卒の初任給 産業別(令和7年・男女計・千円)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」新規学卒者 第1表
産業別の数字には、読み方の注意が3つあります。
- 鉱業,採石業,砂利採取業は、大学卒の該当が約50人と少ないので除きました
- 電気・ガス・熱供給・水道業(約730人)と複合サービス事業(約1,890人)も人数が少なく、翌年に大きく動くことがあります
- 学歴の構成が違うと平均も変わるので、学歴計ではなく、学歴を決めて比べます
業種の違いは、賃上げ全体の動きとも合わせて見られます。2026年の賃金引上げの実態は、賃上げ率の推移 2026年の賃金引上げ実態調査の改定額と規模別・業種別のデータで、業種別の給与と残業時間は、業種別の給与と残業時間 毎月勤労統計で比べる2025年の数字と読み方で整理しています。
初任給の推移 令和2年から令和7年
公式の表で続けて比べられるのは、「新規学卒者の賃金」になった令和2年からです。男女計の推移は次のとおりです(千円)。
| 学歴 |
令和2年 |
令和3年 |
令和4年 |
令和5年 |
令和6年 |
令和7年 |
| 高校 |
177.7 |
179.7 |
181.2 |
186.8 |
197.5 |
207.3 |
| 専門学校 |
208.0 |
206.9 |
212.6 |
214.5 |
222.8 |
230.7 |
| 高専・短大 |
202.2 |
199.8 |
202.3 |
214.6 |
223.9 |
235.5 |
| 大学 |
226.0 |
225.4 |
228.5 |
237.3 |
248.3 |
262.3 |
| 大学院 |
255.6 |
253.5 |
267.9 |
276.0 |
287.4 |
299.0 |
前年比は、大学卒で見ると令和3年がマイナス0.3%、令和4年が1.4%、令和5年が3.9%、令和6年が4.6%、令和7年が5.6%でした。伸びは3年続けて大きくなっています。高校卒は令和6年が5.7%、令和7年が5.0%です。
令和2年から令和7年の5年間の増加は、大学卒が36.3千円(16.1%)、高校卒が29.6千円(16.7%)、大学院卒が43.4千円(17.0%)です。専門学校卒は22.7千円(10.9%)でした。増加額と率は、上の表から編集部が計算しました。
この伸びが、会社の初任給の改定幅と同じとは限りません。統計は新卒の実際の賃金の平均で、企業の構成の変化も入ります。自社の改定は、あとで書く手順で個別に確かめます。
自社の水準を確かめる手順
統計の数字を見たら、自社の数字を次の順で並べます。
手順1 比べる数字を決める
学歴(大学卒など)、企業規模(自社の常用労働者数で大・中・小)、産業の3つを決めます。自社の人数は、グループ全体ではなく、企業全体の常用労働者数です。
手順2 自社の金額を統計の定義に合わせる
自社の初任給から、残業代として固定で払う分を除き、通勤手当を足します。次の表は、考え方の例です。
| 自社の項目 |
統計に合わせるとき |
| 基本給 |
含める |
| 職務手当・資格手当など毎月決まって払うもの |
含める |
| 通勤手当 |
含める(新規学卒者の賃金は通勤手当を含む) |
| 固定残業代 |
除く(時間外の給与は所定内給与額に入らない) |
| 地域手当・住宅手当 |
毎月決まって払うなら含める。ただし他社と比べるときは、支給条件が違う点を添える |
| 賞与 |
含めない(6月分の所定内給与額だけを見る統計) |
地域手当や住宅手当は、条件に合う人だけに払う場合があります。統計の数字は、いわゆる平均の水準なので、条件つきの手当は「含めた場合」と「含めない場合」の2つを出しておくと、あとの説明が楽です。
手順3 最低賃金を下回っていないか確かめる
月給を、年間の所定労働時間から出した時間額に直し、地域別最低賃金と比べます。最低賃金の対象にならない賃金があるため、厚生労働省の案内では、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとの賃金、時間外・休日・深夜の割増賃金を除いて確かめます。
2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均が1,177円、最高が東京都の1,280円、最低が宮崎県の1,085円です。月の所定労働時間を160時間とした編集部の計算例では、次の月額が下限の目安になります。
| 地域 |
時間額 |
月160時間の月額 |
| 東京都 |
1,280円 |
204,800円 |
| 全国加重平均 |
1,177円 |
188,320円 |
| 宮崎県 |
1,085円 |
173,600円 |
東京都の高校卒の募集で、通勤手当を含めて月給205,000円と書いた場合、通勤手当を除くと最低賃金の月額を下回ることがあります。統計の高校卒207.3千円は通勤手当を含む額なので、そのまま最低賃金の計算に使わないでください。発効日と都道府県ごとの額は、最低賃金の改定額と発効日一覧 2026年度は全国加重平均1,177円にあります。
手順4 自社の位置を、差で書き留める
統計の数字から自社の金額を引いた差を、学歴ごとに表にします。次のような表です。
| 学歴 |
自社の金額(通勤手当込み・固定残業代除く) |
該当規模の統計 |
差 |
| 大学 |
(自社の数字) |
大企業273.4・中企業254.1・小企業242.4(千円) |
(計算) |
| 高校 |
(自社の数字) |
大企業216.5・中企業202.2・小企業199.9(千円) |
(計算) |
差の大きさを見て、動かすかどうかは、採用の状況、既存社員の賃金、会社の人件費の計画で決めます。統計は判断の材料の一つです。
自社で決める 初任給を決めるときの項目
この記事は、特定の金額をすすめません。決める項目と、見る資料を整理します。
| 決める項目 |
見るもの |
社内で決めておくこと |
| 学歴ごとの基本給 |
学歴別・規模別の統計 |
学歴の区分と、基本給の額 |
| 手当の範囲 |
手当の支給条件 |
全員に払う手当と、条件つきの手当 |
| 固定残業代 |
労働契約・就業規則 |
時間数と金額、超えた分の精算 |
| 勤務地による差 |
地域別最低賃金・地域手当 |
地域手当を設けるか、額の決め方 |
| 既存社員との関係 |
自社の賃金表・年齢別の賃金 |
入社2年目以降の調整の方法 |
| 改定の時期 |
採用のスケジュール |
いつ決め、いつ募集に出すか |
既存社員との逆転を避ける 賃金表の見直し
初任給を上げると、入社して数年の社員の給与より新入社員の方が高くなる「逆転」が起きることがあります。統計でも、新規学卒者は3年続けて前年を大きく上回っており、若手の賃金表との間隔が詰まりやすい時期です。
逆転は、金額の差だけでなく、納得感の問題として表れます。見直しは、次の順で進めると整理しやすくなります。
- 入社1年目から5年目ごとに、現在の月給を学歴別に並べる
- 新しい初任給を当てはめ、1年目の社員や2年目の社員との差を見る
- 差が小さい、または逆転する層を洗い出す
- 賃金表の改定(全体の引上げ、若手層だけの調整、手当の見直し)を選ぶ
- 説明の文書を、就業規則や賃金規程の改定と合わせて用意する
賃上げの率の見方は、賃上げ率の推移で、年収全体の動きは、平均年収の推移 年代別・男女別・業種別に見る民間給与実態統計調査(令和7年分)で確かめられます。国税庁の調査は、会社の給与から年収を見るもので、初任給の統計とは対象が違います。
募集要項の書き方 固定残業代は分けて書く
初任給を決めたら、募集要項や求人票への書き方を整えます。厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークのリーフレットでは、固定残業代制を採用する場合に、次の3つをすべて明示するよう求めています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
- 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
このリーフレットは、若者雇用促進法にもとづく指針(青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主などが適切に対処するための指針)を参照しています。「固定残業代」は、名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払う割増賃金です。
よくある質問
令和8年の調査の初任給は、もう公表されていますか
2026年10月22日時点では、公表されていません。厚生労働省の過去の公表を見ると、速報は前年12月から1月、結果の概況は3月です。令和7年は速報が2026年1月16日、概況が3月24日でした。令和8年の数字は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のページで確かめてください。
令和元年以前の初任給と続けて比べてよいですか
続けて比べません。令和元年までは別の調査で、通勤手当を除いた初任給額でした。令和2年からは、通勤手当を含む所定内給与額です。この記事の推移は令和2年からです。
初任給に固定残業代を含めて募集してよいですか
固定残業代制を採用するなら、基本給と固定残業代を分け、時間数・金額・追加の精算を明示します。合計額だけの表示は避けます。
統計の平均より低い初任給は、法令に反しますか
平均との比較だけで違法にはなりません。先に、地域別最低賃金を下回らないかを、手当や割増賃金を除いて時間額で確かめます。
今日からできること
- 来年の新卒採用で決める学歴(大学卒・高校卒など)と、自社の企業規模(1,000人以上、100〜999人、10〜99人)を書き出す
- 自社の初任給を、統計の定義(通勤手当を含み、固定残業代を除く月額)に合わせて計算する
- 該当する学歴・規模の統計の数字と並べ、差を表にする
- 勤務地ごとの最低賃金に対して、通勤手当と割増賃金を除いた時間額を計算する
- 入社1年目から5年目の賃金を並べ、逆転が起きる層を洗い出す
- 募集要項の月給の欄を、基本給・手当・固定残業代に分けた書き方に直す
- 令和8年調査の公表が出たら、厚生労働省のページで数字を差し替える