部下に直してほしいことがあるのに、関係が悪くなりそうで言えずにいませんか。でも、フィードバックは、見た事実、その影響、次の一歩の3つに分けて伝えれば、人柄を責める話になりません。
国家公務員の人事評価で使われる面談ガイドラインにも、強みや改善点は事実に即して示し、改善点は非難ではなく「こうすればよくなる」という提案の形で伝える、とあります。1型と例文があれば、言いにくい一言も準備してから話せます。
フィードバックは、ためずにその場で小さく返す
気づいたことは、その日のうちに短く返すイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
内閣人事局の面談ガイドラインによると、部下のよい点や改善点に気づいたら、その場でほめたり指導したりすることが大切です。期末の面談で初めてまとめて伝えるより、日ごろから少しずつ返しておくほうが信頼関係が育ち、面談の負担も軽くなる、という考え方です。1
半年分をまとめて伝えると、どの件の話なのか、部下も思い出しにくくなります。気づいたことは、その日のうちに短く。忘れないように、日付と行動を1行メモしておくのも手です。ガイドラインにも、具体的な行動の例をメモしておく「職務行動記録メモ」の見本が付いています。1
伝える型は、事実・影響・次の一歩
事実は、いつ、何があったか。「いつも」「毎回」とまとめず、1件に絞ります。影響は、その行動でだれの仕事に何が起きたか。次の一歩では、次からどうしてほしいかを提案の形で伝え、相手の考えを聞く一言を添えます。
この3つは編集部の整理ですが、中身は面談ガイドラインの考え方に沿ったものです。改善点は、非難や批判ではなく提案の形で。理由や原因を詰問せずに、「今後どうしたらできるか、何をすればよいか」と相手の考えを尋ねる。ガイドラインが勧めるのは、そういう伝え方です。1
指摘もほめ言葉も、事実・影響・次の一歩の3つで伝える例作成: 編集部 / 出典: 内閣人事局
影響まで言葉にすると、指摘がリーダーの好みではなく、仕事の話だと伝わります。逆に、影響が思いつかないなら、それは急いで直してもらうほどのことではないのかもしれません。
人柄を表す言葉を、見た行動の言葉に置き換える例作成: 編集部 / 出典: 内閣人事局、厚生労働省
言い換えのこつは、「いつも」を日付と件数にすること。人柄を表す言葉を受け取っても、言われた側には直しようがありません。たとえば「ちゃんとして」と言われても、何をすればいいのかが分からないからです。見た行動の言葉に置き換えれば、次にすることがはっきりします。
「なんでこうなったの」も、つい口から出やすい言葉でしょう。だから、理由を問い詰める代わりに「次はどうしたら間に合いそうですか」と先のことを聞けば、部下も考えを話しやすくなります。1
指摘するときの例文
〈〉の中を、自分のチームの話に入れ替えて使えます。
話す場所は、ほかの人のいない所を選びます。ほかの労働者の前で大声で威圧的に叱ることを繰り返す。人格を否定するような言動をする。パワハラ防止の指針では、どちらもパワハラに当たると考えられる例です。2一方で、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示や指導は、パワハラには当たりません。2言うべきことは、1対1で、落ち着いた声で伝えれば大丈夫です。
事情が返ってきたら、聞いてから決める
次の一歩の最後に相手の考えを聞くのは、部下の事情を知るためです。「ほかの仕事と重なっていました」「やり方が分からなくて止まっていました」と返ってきたら、途中で口を挟まずに最後まで聞きます。面談ガイドラインも、部下が話し始めたら途中で口を挟まず、よく聞くよう求めています。1
聞いた事情は、仕事の割り振りや締め切りの決め方を見直す材料になります。ガイドラインが目を向けるよう勧めるのも、結果のよしあしより、原因と進め方のほうです。1部下ひとりの問題ではなく、頼み方の側に直す所が見つかることもあるでしょう。
話の終わりには、決めたことを短く言葉にして確認します。
ほめる一言はチャットで送ってもかまいませんが、指摘はできるだけ顔を見て話せる場で。文字だけだと、声の調子が伝わらず、強く受け取られることがあるからです。
ほめるときも、事実と影響で伝える
ほめるのも、リーダーのフィードバックの半分です。部下の成果に関心を持ち、一歩でも前進したタイミングをとらえて、段階ごとにほめる。これもガイドラインの勧めです。1
ただ、「さすが」「頑張ってるね」だけだと、何がよかったのかは伝わりにくいもの。ほめるときも、事実と影響を言葉にします。
成果が出る前の工夫や段取りも、ほめる材料になります。ガイドラインが見るよう求めるのは、熱心さや時間をかけたことよりも、チームへの具体的な貢献や創意工夫、効率よく進めたかどうかです。1
面談でまとめて伝えるときの順番
評価の面談のように、時間をとって伝える場面もあります。面談ガイドラインが期末の面談で勧める流れは、次のとおりです。1
- 労をねぎらう言葉から始めて、話しやすい雰囲気をつくる。
- 部下が話し始めたら、途中で口を挟まずに聞く。
- 認識が一致していることから話し、そのあとで一致しないことを話す。
- 結果のよしあしより、原因と進め方に目を向ける。
- 前向きな一言で終える。
評価シートの作り方と面談の進め方は、人事評価シートの作り方で詳しく分かります。
フィードバックの前に確認すること
- 伝える事実を1件に絞り、日付と中身をメモした。
- その行動の影響を、1文で言える。
- 次の一歩を、提案の形で用意した。
- 相手の考えを聞く一言を用意した。
- ほかの人のいない場所と時間をとった。
- 最後に伝える前向きな一言を決めた。
年上の部下への伝え方は年上の部下との接し方に、リーダーになって最初の1か月の進め方は初めてのリーダー・主任の心構えにまとまっています。