内定のあとに届く労働条件通知書は、入社してからの働き方を決める書類です。承諾の返事を出す前に、賃金、残業と休み、勤務地と仕事の3つの欄と、求人票との違いを確かめておくと、入ってから「聞いていた話と違う」と悩む場面を減らせます。
労働条件通知書は、会社が書面で示す決まりの書類
届いた通知書は、求人票と並べて読むイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
会社は、労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を示さなければなりません。賃金と労働時間をはじめとする決まった項目は、書面で示すことになっています。1本人が希望すれば、メールなどで受け取ることもできます。2
書面で示される項目は、次のとおりです。2
| 項目 |
書かれること |
| 契約期間 |
期間の定めがあるか。あるときは期間 |
| 更新の基準 |
有期契約のとき。更新の有無と判断の基準、更新の上限 |
| 就業の場所と業務 |
入社した直後の場所と仕事、将来の変更の範囲 |
| 時間と休み |
始業と終業の時刻、所定の時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇 |
| 賃金 |
決め方、計算と支払いの方法、締切日と支払日 |
| 退職 |
退職の手続き、解雇の事由 |
裏を返すと、昇給、賞与、退職金などは、制度があっても書面で示す義務まではありません。2書かれていなければ、無いとは限らないので、聞いて確かめます。パートや有期契約の場合は書面に足される項目があり、くわしくは会社側の目線で書いた労働条件通知書の書き方で確かめられます。
通知書がまだ届いていないなら、承諾の前に送ってもらうよう頼んでかまいません。内定通知書と承諾書の流れは、内定通知書と内定承諾書の書き方にあります。
賃金の欄は、基本給と手当を分けて見る
労働条件通知書で、承諾の前に見る欄作成: 編集部 / 出典: 労働基準法第15条、同施行規則第5条、厚生労働省のリーフレット
賃金の欄で、まず見たいのは基本給と手当の内訳です。月給の合計だけを見ると、残業代や賞与の計算のもとになる額が分かりません。
とくに気をつけたいのが、固定残業代です。決まった時間分の残業代を、残業の有無にかかわらず定額で払う仕組みで、名前は「○○手当」などさまざまです。求人の段階で、会社は次の3つを示すことになっています。3
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代が何時間分で、いくらか
- その時間を超えた残業や休日、深夜の労働には、割増賃金を追加で払うこと
手当の名前だけで、何時間分なのかが書かれていなければ、聞いて確かめます。試用期間があるときは、その間の賃金が本採用のあとと違うなら、それぞれを示すことになっています。4
締切日と支払日も見ておきます。転職の場合、最初の給与がいつ入るかで、入社月の家計の見通しが変わるからです。残業代の計算が合っているかを確かめたいときは、割増賃金とはが役に立ちます。
残業と休みの欄は、3か所を見る
時間と休みの欄で見るのは、次の3か所です。
- 始業と終業の時刻、休憩の時間
- 所定の時間を超える労働があるか
- 休日と休暇
2つ目が「あり」なら、月にどれくらいあるのかを聞いてかまいません。厚生労働省のリーフレットは、求人の書き方の例に「あり(月平均20時間)」を挙げています。4裁量労働制のときは、何時間働いたものとみなすかが書かれます。
休日は、曜日だけでなく、年末年始や夏季の休みがどう扱われるかも見ておきたいところです。
勤務地と仕事は、「変更の範囲」まで読む
2024年4月から、就業の場所と業務は、入社した直後のものに加えて、将来の「変更の範囲」も示すことになりました。5変更の範囲とは、配置転換などで変わる可能性のある場所や仕事の範囲のことです。
たとえば、入社直後が本社でも、変更の範囲に「会社の定める事業所」とあれば、ほかの事業所への異動もありうるということ。転勤のない働き方を望むなら、ここがいちばん大事な欄になります。異動と転勤、出向の違いは異動、転勤、出向、転籍の違いで確かめられます。
求人票と違っていたら、変更の明示を確かめる
求人票と違う条件を示すときの4つの場合と、会社に求められること作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省・都道府県労働局「労働者を募集する企業の皆様へ」ほか
求人票や面接で聞いた条件と、通知書が違うこともあります。会社が最初に示した条件を変えて契約しようとするときは、変更した内容を示さなければなりません。6厚生労働省のリーフレットは、変更の明示が要る場合として、次の4つを挙げています。4
- 最初と違う条件にする(基本給30万円が28万円になる)
- 最初の幅の中で決める(25万円から30万円が28万円になる)
- 最初にあった条件をなくす(営業手当3万円がなくなる)
- 最初になかった条件を加える(営業手当3万円が加わる)
示し方は、最初の条件と変わったあとの条件を見比べられる書面を渡すのが望ましく、通知書の変わった所に下線や色を付ける方法もあります。会社は、条件が決まったら、考える時間がとれるよう、できるだけ早く知らせることになっています。変わった理由を聞かれたら、きちんと説明することも求められています。4
入社したあとで、示された条件が事実と違うと分かったら、働く人はすぐに契約を解除できます。働くために住まいを移していて、解除の日から14日以内に帰郷するなら、必要な旅費は会社が負担します。1とはいえ、入ってから争うのは大変です。承諾の前に、求人票と通知書を並べて違いに印を付けておくのが、いちばん確かな方法です。
聞きにくいことは、人事にメールで、項目を挙げて聞く
残業や賞与のことは、聞くと評価が下がりそうで気が引けますよね。でも、書面にない項目を確かめるのは、契約の前のふつうの手続きです。面接官より、採用の窓口の人事に聞くほうが話が早く進みます。
メールにすると、答えも文字で残ります。項目に番号を振っておくと、相手も答えやすくなります。
承諾の期限までに答えが届きそうにないときは、期限を少し延ばせるかも、あわせて相談できます。
承諾の返事の前に確かめること
- 労働条件通知書を、書面かメールで受け取ったか。
- 契約期間と、試用期間の有無。試用期間中の条件が違うか。
- 就業の場所と業務の、変更の範囲。
- 始業と終業の時刻、残業の有無、休日と休暇。
- 基本給と手当の内訳。固定残業代があれば、何時間分でいくらか。
- 締切日と支払日。最初の給与がいつ入るか。
- 書面にない賞与、昇給、退職金をどう確かめたか。
- 求人票と並べて、違う所に印を付けたか。変更の明示があったか。
答えに納得できないまま、期限が迫ることもあるかもしれません。募集や採用の条件のことは、都道府県労働局と全国の労働基準監督署などにある総合労働相談コーナーで、無料で相談できます。7
この記事は、2026年11月2日に確認した労働基準法、職業安定法と厚生労働省の資料にもとづいています。