身近に目標になる先輩がいなくても、メンターは探せます。社内なら制度の有無を人事に聞き、他部署の少し上の先輩に当たる。社内にいなければ、研修や地域のネットワークといった社外の場に広げる。この順番なら、今の職場に合う人がいなくても動き出せます。
最初の連絡で「メンターになってください」と頼む必要はありません。聞きたいことを1つに絞って、30分だけお願いするところから始めましょう。
メンターは、評価をしない「斜め」の相談相手
聞きたいことを1つ持って、少し上の先輩に話を聞くイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
厚生労働省の委託事業でまとめたマニュアルによると、メンターは経験豊かな先輩で、双方向の対話で、キャリアの課題や悩みの解消を支える人です。指示や命令、評価をする直属の上司とは違い、基本は異なる職場の先輩が担います。管理職から数年上の先輩まで、目的によって変わります。この距離感を、マニュアルは「斜めからの支援」と呼びます。答えを決めてくれる人ではなく、本人が決めて動けるように支える役割です。1
似た言葉のロールモデルは、自分がモデルにしたい人のこと。同じマニュアルによると、1人とは限らず、発想の豊かな人、交渉の上手な人など、複数の人をモデルにできます。1
だから、仕事も両立も人柄も全部そろった1人を探さなくてかまいません。管理職になるか迷っているなら昇進したばかりの人に、異動を考えているならその部署の人に。聞きたいことごとに相手を変えれば、候補はずっと増えるはずです。
まず、迷っていることを1行で書いてみてください。「来年の昇進の打診を受けるか迷っている」くらいで十分です。この1行が、探す場所と最初の連絡の中身を決めます。
社内では、制度と他部署の先輩から当たる
最初に見たいのは社内の制度です。人事に、メンター制度やロールモデルの紹介、女性のネットワークがあるかを聞いてみましょう。制度があれば、組み合わせを会社が考えてくれます。マニュアルでは、対話は原則として就業時間内に行い、話した内容を口外しない守秘のルールを置くことが、基本の決まりとして挙がっています。1回の時間は30分から2時間程度、頻度は月1回以上や2か月に1回などが例です。1
でも、制度がなくてもあきらめなくて大丈夫。社内報や研修の講師、全社の会議で話していた人の中に、気になる人はいないでしょうか。直接の接点がなければ、上司や同期に「この方に話を聞いてみたい」と紹介を頼む手もあります。
上司にはひと言伝えておくと動きやすくなります。マニュアルも、メンターと話す人に向けて、自分の業務に支障が出ないようにすることと、直属の上司との会話をおろそかにしないことを挙げました。1上司に話しにくい相談なら、話す範囲は自分で決めてかまいません。1on1での切り出し方は1on1で上司に話すことで確認できます。
メンターを探す順番と、社外で気をつけたい誘い作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省、国民生活センター
社内にいなければ、社外の場に広げる
女性が少ない職場や小さな会社では、社内で探しきれないこともあります。マニュアルも、社内にロールモデルがいない場合は、社外の研修会や地域のネットワークを活用する方法を示しました。1
探しやすいのは、住んでいる地域や職場のある地域の場です。マニュアルには、自治体が主催する女性活躍のセミナーや、地域のネットワークの事例もあります。1都道府県や政令指定都市の男女共同参画センターは、内閣府の一覧で調べられます。2京都の事例のように申し込みが企業経由中心の研修もあるので、気になるものを見つけたら人事に相談してみましょう。1
もう1つの入り口が、国の無料のキャリア相談です。キャリアコンサルタントはメンターとは違いますが、自分が何に迷っているのかを整理する相手になります。在職中でも、予約して対面かオンラインで受けられます。3夜や週末の枠はキャリア相談を無料で受ける方法で確認できます。
前の職場の先輩や、資格の勉強会で知り合った人に声をかけるのもよい方法です。同じ会社でない分、評価を気にせず話しやすいでしょう。ただ、社外の人には自社の機密や同僚の個人情報を話さないようにします。
「交流会」「無料相談」の誘いには気をつける
社外で探すときに気をつけたいのが、相談や交流をうたった勧誘です。国民生活センターが2026年9月に出した注意喚起には、「副業の紹介」「面接」「交流会」などと説明されていたのに、実際には高額なビジネス講座を勧められた相談が並びます。月額で説明されても、総額が数十万円から100万円を超える例もありました。4
2025年度の相談では、女性が63.1%、給与生活者が60.5%を占めています。4スキルアップに前向きな人ほど、ひとごとではありません。
「今日契約すれば特典がある」と急かされても、その場で決めずに持ち帰りましょう。話が違うと感じたら、きっぱり断ってかまいません。不安なときや契約してしまったときは、消費者ホットライン188で最寄りの消費生活センターに相談できます。4
最初の連絡は、質問1つと30分だけ
相手が忙しい人ほど、何を聞かれるのか、どれくらい時間を取られるのかが分かると返事をしやすくなります。入れたいのは、その人に頼む理由、聞きたいこと、時間、断りやすくする一言の4つです。
相談相手への最初の連絡に入れることと、話したあとにすること(編集部の例)作成: 編集部 / 出典: ベンチャー・スピリット!編集部
話したあとは、その日のうちにお礼と、試してみることを1行送ります。後日、試した結果を伝えると、相手も次に話しやすくなるでしょう。続けて話したいと思ったら、そこで初めて「また相談してもいいですか」と聞けば十分です。
会うと決まったら、話したいことを3つほどメモしておきましょう。マニュアルでも、最初の段階では、どんなことを話したいのか、どうなりたいのかを伝え合い、頻度や方法も確認するとしています。オンラインなら、周りに聞かれない場所を選び、終わりの時間も決めておくと話しやすくなります。1
合わないと感じることもあります。社内の制度でさえ、しっくりこないときはお互い遠慮なく伝えると、最初に決めておくのがマニュアルの勧めです。11人目で決めなくてかまいません。
メンターを探す手順
- 迷っていることを1行で書く。
- 人事に、メンター制度やロールモデルの紹介があるか聞く。
- 他部署や社内報、研修で気になった人を3人挙げる。
- 社内にいなければ、地域のセミナーやネットワーク、国の無料相談を調べる。
- 1人に、質問1つと30分のお願いを送る。
- 話した日にお礼を送り、試した結果をあとで伝える。
自分の強みや経験を先に整理しておくと、話が具体的になります。整理のしかたはキャリアの棚卸しで確認できます。