評価に納得できなくても、「納得できません」と言わずに理由は聞けます。たずねるのは、どの基準で、どの事実を見てこの評価になったのか、の2つです。
何か月も積み上げた仕事についた結果ですから、悔しいですよね。その気持ちは消さなくてかまいません。ただ、面談のゴールを評価の変更ではなく、来期に上がる条件を持ち帰ることに置くと、聞くことがはっきりしてきます。
「納得」を面談のゴールにしない理由
同じように感じている人は少なくありません。厚生労働省の2024年の調査で、「人事評価・処遇のあり方」に不満かやや不満と答えた正社員は22.0%でした。1満足かやや満足の42.5%より少ないとはいえ、不満の割合は11項目のうち賃金の28.3%に次ぐ高さです。
ただ、声を上げれば納得できるとは限りません。別の調査によると、処遇への不平や不満を過去3年間に会社へ伝えた女性は16.0%で、男性の9.4%を上回りました。2伝えた先は全体で「直接上司へ」が74.3%と最多です。
ところが、伝えた人のうち「納得のいく結果が得られた」は11.1%にとどまり、2019年の調査の18.2%より下がっています。「納得のいく結果は得られなかった」は55.0%と、半数を超えました。どちらも評価に限らない、処遇全般の数字です。
裁判でも、評価をくつがえす壁は高めです。大阪高裁は1997年の光洋精工事件で、長い期間の格付けを争った従業員の請求を退けました。判決は人事考課に「裁量が大きく働く」と述べ、前提にした事実の誤認や不当な動機、重視すべき事項の無視などで評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと認められない限り、違法とはできないとしています。3
一方で広島高裁は2001年のマナック事件で、規程の評定期間に入らない出来事を理由に評価を下げたと推認される昇給査定を、裁量権の逸脱としました。4どちらも個別の会社の規程と事実にもとづく判断ですが、どの事実を、どの期間で、どう重く見たかという問いは、面談で確認したいことと重なります。
会社には説明する義務があるのでしょうか。評価の理由を本人に説明するよう定めた条文は、労働基準法にも労働契約法にもありません。5だから「説明してください」と迫るより、「教えていただけますか」と頼むほうが話は進みやすいのです。評価が変わるかは分からなくても、来期に上がる条件を聞くことは今の立場でもできます。
結果を受け取った日からの手順
結果を受け取った日は、気持ちをノートに書き出して一度離れるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
面談の席で初めて結果を聞いたときは、うまく言葉が出てこなくてもかまいません。その日に話し切ろうとせず、「ありがとうございます。内容を確認して、改めてお話しさせてください」とだけ返せば十分。悔しさはノートに全部書き出してしまいましょう。
順番と日数は編集部の目安で、面談の予定に合わせて動かしてかまいません。
- 受け取った日は、短いお礼だけ返す。
- 1〜2日後までに、評価シートと期初の目標、記録を並べる。
- 3日後までに、ずれを1つに絞り、聞くことを2つ書く。
- 1週間以内に、上司へ15分のお願いを送る。
- 面談の日のうちに、聞いた言葉をメモに残す。
結果を受け取った日から面談のあとまで、やることとまだしないことの順番(編集部の例)作成: 編集部 / 出典: ベンチャー・スピリット!編集部
資料を並べたら、この評価がもう確定しているかどうかも見ておきたいところです。上司の一次評価の段階なら、抜けていた事実を足せるかもしれません。確定後なら話の中心は来期になります。再評価や異議の申し出の手続きがあるかは、評価制度の規程か人事の案内で分かります。
給与や賞与への響き方は、就業規則で調べられます。常時10人以上の会社は賃金の決め方や昇給の決まりを就業規則に定め、働く人に周知する義務があるからです。6
上司へのお願いは、来期のためだと最初に書くと、相手も身構えずに読めるでしょう。
ずれは4か所のどこかにある
上司と話がかみ合わないと感じるとき、ずれている場所は大きく4つに分かれます。基準、事実、重み、枠。法律の用語ではなく、面談に備えるための分け方です。図の上から順に当てはめると、聞くことが1つに絞れます。
上司とのずれを基準、事実、重み、枠に分け、面談で確認することと持ち帰るものを示した図作成: 編集部 / 出典: 全国労働基準関係団体連合会「労働基準判例検索」
基準と事実は、話せば動きやすいずれです。たとえば同じ「期待どおり」でも、上司と自分が思い描く姿が違っていれば、言葉をそろえるだけで来期の動き方が変わります。
でも、枠のずれは自分では動かせません。部門ごとの調整や、段階ごとの人数に目安を置く相対評価を使う会社もあり、上司の一次評価がそのまま通るとは限らないからです。それでも、動かせない部分だと分かれば、力を入れる先を選び直せます。
面談では、基準、事実、来期の順に聞く
最初に聞くのは基準です。会社の物差しを説明するだけでよいので、上司も責められたと感じずに話せます。事実を聞いたあとで自分の事実を1つだけ足し、最後に来期の話へ進みます。
上司の答えがあいまいでも、問い詰めなくてかまいません。部門の調整で決まった結果を伝えているだけで、本人にも説明しきれないことがあるからです。そんなときは「いちばん響いた項目を1つ挙げるとしたら、どれでしょうか」と範囲を狭めるか、「確認していただいたうえで、後日教えていただけますか」と時間を置きます。
言いたくなる言葉も、聞き方に変えられます。
| 言いたくなる言葉 |
聞き方にすると |
| 納得できません |
どの項目が、上の段階の基準に届いていなかったのでしょうか |
| 見てもらえていません |
〇月の〇〇の件は、判断の材料に入っていますか |
| 〇〇さんより私のほうが |
上の段階と私の結果では、どこに差がありましたか |
| がんばったのに |
期初の目標〇〇は、△△まで達成しました |
いちばん避けたいのが3行目です。ほかの人の評価は上司も話しにくく、話がそこで止まってしまいます。
休業や性別が理由に見えたら、外に相談する
評価の理由そのものが法律に触れそうなら、話は別です。性別を理由に昇進や降格で差をつけることや、妊娠、出産、育児休業を理由に不利益に扱うことは、法律で禁じられています。7国の指針も、昇進や昇格の人事考課で不利益な評価をすることを、不利益な取扱いの例に挙げています。8
相談先は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。時短勤務が関わるときの考え方は、時短勤務の評価の記事で詳しく読めます。
そこまでの話でなくても、社内の相談窓口か、社外の総合労働相談コーナーで話せます。コーナーはあらゆる分野の労働問題を扱い、無料で予約もいりません。
パートタイムや有期雇用で働く人は、正社員との待遇の違いの内容と理由について、会社に説明を求められます。9評価の理由の説明とは別の決まりですが、処遇の差が気になるときの入り口になります。
上司の言葉を、そのまま目標に書く
面談の日のうちに、上司が使った言葉のままメモに残します。「主体的に」を自分の解釈で言い換えず、挙がった数字や場面もそのままに。それを目標シートに1行で書いて見てもらえば、上司と同じ物差しで来期を始められます。
月々の事実は、自己評価の書き方の月末の記録で積み上げていけます。途中で見てもらう場があるなら、1on1の準備メモに1行足すだけで続きます。
悔しさが少し残ったままでも、手元に条件が1つあれば、来期の始まり方は変わります。今回の評価は動かなくても、次に見せるものは今日から決められるのですから。
この記事は、2026年11月2日に確認した法令と、厚生労働省の調査と指針、全国労働基準関係団体連合会の判例検索にもとづいています。自分の場合の判断に迷うときは、弁護士や社会保険労務士、都道府県労働局に相談してください。