人事評価シートには、法律で決まった形がありません。何を並べればいいか迷いますが、下敷きにできる型は国がすでに公開しています。
厚生労働省の職業能力評価シートには、経理や人事など職種ごとの項目があり、国家公務員の人事評価の手引きには、評価者が陥りやすいずれと面談の流れまで載っています。この2つを組み合わせると、項目、点の付け方、面談の順番まで、借りられる型がそろいます。
評価シートは「行動」と「目標」の2本で組む
1枚の評価シートをはさんで、事実をもとに話すイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
国家公務員の人事評価は、能力評価と業績評価の2本立てです。能力評価は、仕事の中で実際にとった行動をもとに評価するもので、潜在的な能力や人格は、評価の対象外です。業績評価は、期の初めに立てた目標がどこまで達成できたかを、進め方や質も含めて見ます。1
民間の会社でも、この2本に分けておくと、シートの欄が決めやすくなります。行動の欄には「〜している」と書ける項目を並べ、目標の欄には期の初めに本人と決めた目標を書く。あとは自己評価、上司の評価、コメントの欄を足せば、1枚の骨組みができます。
目標の欄には、「何を」「いつまでに」「どの水準まで」を入れます。国家公務員の面談ガイドラインでも、評価者が面談の前に、目標にこの3つと「どのように」、果たす役割や貢献が入っているかを確かめることになっています。2
評価シートの骨組みと印の付け方、職種ごとの項目の例作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省、内閣人事局
職種別の評価項目は、職業能力評価シートから借りる
厚生労働省の職業能力評価シートは、職種とレベルごとに、Excelで公開されています。中身は2段です。上の段は、どの職種にも共通する7つの能力。仕事の進め方や周りとの連携、業務の効率化などが並びます。下の段が、その職種ならではの仕事の項目です。3
項目はどれも、「〜している」で終わる行動の文です。たとえば、レベル1の経理には「証憑に基づく仕訳・伝票記入・転記など簿記の定例的業務に関しては、上司の包括的助言に基づき独力で業務を遂行している」。人事には、入社・退社の手続きや賃金台帳の作成を、正確に、遅滞なく進めているかという項目があります。4
本人と上司が、それぞれ項目ごとに印を付けます。○は一人でできている、△はほぼ一人でできている(一部に助けが要る)、×はできていない。4本人と上司の印がちがう項目は、面談で話すきっかけになります。3
ただ、項目の言葉はそのまま使わなくてかまいません。国も、各社の実情に合わせて作り直すほうが効果的だという立場です。3自社にない業務の項目は外し、社内で使っている言葉に置きかえていきましょう。
評価者ごとの点のずれは、言葉と事例でそろえる
同じ人を見ても、評価者によって点は変わります。国家公務員の手引きによると、評価者が陥りやすいずれは7つ。印象に引っぱられるハロー効果、甘くなる寛大化傾向、まん中に寄せる中心化傾向、先に処遇を決めてから点を作る逆算化傾向などです。1
対策として手引きが勧めるのは、具体的な行動の事実で評価すること、1つの事実は1つの項目だけで評価すること、自分の評価の目線が甘すぎないかを、段階ごとの説明に照らして確かめることです。1国家公務員の場合は、評価者のあとに調整者が入り、評価者のあいだに不均衡がないかを確かめる仕組みです。1
会社でそろえるなら、方法は2つです。1つは、段階の言葉に行動の例を書き足すこと。もう1つは、評価者どうしで同じ事例に点を付けて、結果を比べる打ち合わせを、評価の前に開くこと。つまり、ずれた項目こそ、言葉を直すべきところです。
評価者が陥りやすい7つのずれと対策、評価の前のそろえ方作成: 編集部 / 出典: 内閣人事局・人事院
評価面談は、本人の話から始める
面談の時間は期首も期末も、15分から30分ほどが目安です。2
期首の面談は前の期の振り返り、今期の役割と期待を伝えること、目標のすり合わせの順です。期末の面談は、本人に今期の取り組みを話してもらうところから始め、集めた事実にもとづいて評価の結果と理由を伝え、最後に強みと改善点を示して来期の話をします。2期末の面談の目的は、評価を伝えることそのものではなく、次の行動や意欲につなげることにあります。2
評価シートを作る手順
作り始める前に確かめておきたいのが、育児・介護休業法の指針です。昇進・昇格の人事考課で不利益な評価をすることは、不利益な取扱いにあたります。休業した期間を超えて、一定の期間、昇進・昇格の選考の対象から外す制度や、実際には働いているのに、育児休業などを申し出たことだけで、ほかの人より不利に評価することも同じです。5
評価の項目や点の付け方が、休んだ期間の分を超えて不利にならないか。シートを作る段階で見ておくと、あとで説明に困りません。働く側から見た目標の立て方は、時短勤務で評価が下がらないようにで確認できます。
- 職種ごとに、どのレベルの人を評価するかを決め、職業能力評価シートをダウンロードする。
- 共通の7つの能力と、職種の項目から、自社の仕事に合うものを選び、言葉を直す。
- 段階(○△×や5段階など)ごとに、行動の例を書き足す。
- 業績の目標の欄に、「何を・いつまでに・どの水準まで」を書く欄をつくる。
- 評価者どうしで同じ事例に点を付けて比べ、ずれた項目の言葉を直す。
- 期首と期末の面談の日を決め、1人15〜30分を確保する。
- 育児休業や短時間勤務の人が、休んだ期間を超えて不利にならないかを確認する。
評価される側の準備は、評価面談の自己評価の書き方と評価に納得できないときの聞き方にあります。面談の前に、どんな準備をして来るのかを知っておくと、話を引き出しやすくなります。
1枚のシートが、面談で話すことの下書きになる
評価シートは、点を付けるための表であると同時に、面談で何を話すかの下書きでもあります。行動の言葉がはっきりしていれば、評価者も「なぜこの点なのか」を事実で話せます。
まずは1つの職種で、職業能力評価シートを開いてみてください。自社の仕事に合う項目に印を付けていくだけで、たたき台はできあがります。
資料は、厚生労働省と内閣人事局のサイトで2026年11月3日時点に公開されている版です。国家公務員の手引きは、民間の会社が作るときの参考として引いています。