月末になって領収書を探し、思い出しながら申請書を埋めていると、精算に何時間もかかります。経理の側も、提出が締め日の直前に集中し、差し戻しのやり取りで時間が過ぎていきます。この記事では、申請する人の手元の段取りと、経理が提出を早めてもらう工夫を、編集部の目安として整理します。税や保存の決まりは、経理側の記事にリンクして、ここでは繰り返しません。
月末に時間がかかるのは、領収書を探して思い出す作業です
精算の時間を、作業ごとに分けてみます。数字を入力する時間は短く、長くかかるのは次の3つです。
| 時間がかかる作業 |
起きやすい理由 |
| 領収書を探す |
かばん・財布・ポケットに分かれて入っている |
| 内容を思い出す |
誰と・何のための支出か、1か月前のことを覚えていない |
| 交通費の区間を調べ直す |
日付ごとの行き先を、手帳やメールから集め直す |
どれも、その日のうちなら数十秒で済むことです。時間がたつほど、探す・思い出す・調べ直すの作業が増えます。ここから、「もらった日に分ける」「毎週まとめる」「締め日の前に下書きを終える」の3段階に分ける考え方が出てきます。
経費精算の段取り: もらった日・毎週・締め日前の3段階作成: 編集部 / もとの資料: 編集部の目安(法令の決まりではありません)
時間の目安や「3日前」は、編集部の考えた例です。会社の締め日と、自分の仕事の波に合わせて変えてください。
もらった日にやること 分ける・撮る・メモする
1か所に入れる
領収書は、財布やポケットに入れず、封筒かクリアファイルの「未処理」に入れます。外出が多い人は、かばんの中とデスクの2か所に増やさず、1か所を決めます。入れる場所が複数あると、探す場所も複数になります。
分け方の例は、次のとおりです。
| 入れ物 |
入れるもの |
| 未処理 |
まだ申請していない領収書・レシート |
| 申請済み |
申請して承認を待つもの(承認後は会社の保存の決めに従う) |
| 保管 |
会社の規程で、原本の保管が必要な書類 |
クリアファイルは、中身が見えるので、入れ忘れに気づきやすい点が利点です。月ごとに1冊に分ける必要はなく、「未処理」と「申請済み」の2つで始められます。
裏に1行メモを書く
レシートの裏か余白に、「誰と・何のために」を1行書きます。例は次のとおりです。
会議費や交際費は、相手と人数、目的を申請書に書く会社が多く、あとから思い出すのがいちばん大変な項目です。書くのは10秒ほどで、月末の悩みを大きく減らせます。
スマホで撮るときは、会社の規程を先に確かめる
領収書をスマホで撮っておくと、紙をなくしたときの備えになり、申請の画面に添付する手間も減ります。ただし、撮影した画像を正式な保存として扱ってよいかは、別の話です。電子帳簿保存法のスキャナ保存は、国税庁が要件を定めており、会社が採用しているかどうかで扱いが変わります。紙を捨ててよいかも、会社の規程に従ってください。要件は経費精算の流れ 申請から承認・支払いまでと締め日・支払日の決め方と電子帳簿保存法の概要にあります。
撮るときの編集部の目安は、次のとおりです。
- 机の上に平らに置き、全体が入るように撮る
- 影や端の切れがないか、撮ったあとに確かめる
- 紙のレシートは、感熱紙の文字が薄れることがあるので、早めに撮る
電子の領収書は、受け取った日に決めた場所へ
ネット通販や配車アプリで、領収書をPDFや画面で受け取る場面もあります。受け取った日に、会社が決めたフォルダへ保存するか、メールで経理へ送ります。国税庁の一問一答では、従業員が立て替えた場合の電子データは、会社が集めて管理することが望ましいとされています。保存の決まりは電子帳簿保存法の概要で確かめてください。
交通費は毎日1行、4つの項目で残します
交通費は、1回の金額が小さく、件数が多いため、月末にまとめて思い出すのが難しい項目です。手帳・スマホのメモ・スプレッドシートのどれでもよいので、毎日1行残します。
| 項目 |
書き方の例 |
| 日付 |
10/23 |
| 区間 |
会社 → ○○駅(往復) |
| 目的 |
A社 訪問 |
| 金額 |
往復 640円 |
書くのは、移動した日の帰りの電車の中や、翌朝の始業前で十分です。区間は、駅名で書くと申請の入力が楽になります。
交通系ICカードの利用履歴の扱い
履歴を印字や画面で出せるICカードは多くありますが、履歴を申請の根拠として認めるかどうかは会社のルールです。履歴には、私用の移動や、仕事と関係のない乗り降りも並びます。履歴だけを添付して目的を書かないと、確認のたびに問い合わせが来ます。会社のルールに従いながら、日付・区間・目的・金額の記録を自分で残しておくと、どの方式でも使えます。
税の面では、1回の取引が税込3万円未満の公共交通機関の運賃は、請求書等の保存がなくても、一定の事項を書いた帳簿だけで仕入税額控除ができるとされています(国税庁インボイスQ&A)。ただし、これは税の控除の話で、会社が区間と金額の申請を求めてはいけない、という意味ではありません。くわしくは経費精算の流れにまとめています。
領収書をもらい忘れた・なくしたときは、早めに経理へ相談します
もらい忘れやなくした場合の扱いは、法律で一律に決まったものではなく、会社の規程で決まります。一般的な扱いの例は、次のとおりです。
| 場面 |
一般的な対応の例 |
| もらい忘れた |
店に再発行を頼めるか、先に確かめる。難しければ、社内の書類で代える |
| なくした |
同じく再発行を頼む。難しければ、社内の書類で代える |
| 電子の領収書が見つからない |
通販やアプリの購入履歴から再取得できることが多い |
社内の書類は、出金伝票や支払証明、領収書紛失届などの名前で呼ばれます。一般的には、次の項目を書き、上長が確認します。
自動販売機や、駅の券売機のように、そもそも領収書が出ない支払いもあります。その場合の扱いは、規程に書いてある会社が多いので、一度確かめておくと慌てません。クレジットカードの明細や、ネットの購入画面、メールの注文確認が支払いを示す資料になることもあります。領収書の宛名や但し書きは領収書の書き方 但し書き・宛名・収入印紙と再発行を頼まれたときの対応に整理しています。
締め日に向けた段取り 週1回まとめて、3日前に下書きを終える
週に1回、15分だけ時間を取る
曜日と時間を決めて、未処理の封筒を開きます(例: 金曜の終業前)。順番は、次のとおりです。
- 領収書を日付順に並べる
- 申請の画面に入力する(経費精算システムがなければ、申請書の下書きに書く)
- レシートと入力の金額を、1件ずつ見比べる
- 処理した領収書を「申請済み」へ移す
提出はまだしなくても、入力まで終えておくと、月末は確認と提出だけになります。週1回が難しければ、2週に1回でも構いません。
締め日の3日前に下書きを完成させる
締め日の当日は、承認者が外出していたり、システムが混み合ったりします。編集部の目安は、締め日の3日前に下書きを完成させ、2日前に提出することです。差し戻されても、直す時間が残ります。
| 時期 |
やること |
| 締め日の1週間前 |
未処理の領収書を数え、足りないものを探す |
| 3日前 |
下書きの入力を終え、チェックリストで見直す |
| 2日前 |
提出する。承認者の予定を確かめる |
| 締め日 |
差し戻しがあれば当日に直して返す |
出張や営業が多い人の工夫
立て替えが多い人は、出張から戻った日に、その出張の精算を済ませる方法が向いています。出張の記憶が新しいうちに、日程・区間・目的を書けます。会社が都度の申請を受け付けるなら、月末の締めを待たずに出したほうが、払い戻しも早くなります。
経理が提出を早めてもらう工夫
ここからは、経理や総務の担当向けです。提出が遅れる理由は、本人の怠けだけではありません。締め日を知らない・書き方が分からない・どの様式か分からない、といった「迷い」の場合が多くあります。
締め日の案内は、早めに、具体的に送る
案内は、締め日の1週間前と3日前の2回に分けて送ると、気づく人が増えます。
チャットのリマインドは、短く・名前を出さずに
提出していない人の名前を全体に出すのは避け、個別の連絡は個別に送ります。リマインドの文に、期限・方法・リンクの3つを入れておくと、読んだ人がその場で動けます。
差し戻しを減らすチェックリストを、提出画面の近くに置く
よくある差し戻しの理由と、提出前に見る8項目を図にまとめました。申請書の近くに置くか、必須欄にして、申請者が提出前に見られるようにします。
よくある差し戻しと、提出前のチェックリスト8項目作成: 編集部 / もとの資料: 編集部の目安(法令の決まりではありません)
| よくある差し戻し |
申請者が見る点 |
経理側の工夫 |
| 金額が合わない |
レシートと入力の数字 |
金額欄を領収書の画像の隣に表示する |
| 日付が違う |
利用日と申請日の区別 |
欄の名前を「利用日」と明記する |
| 目的・相手が空欄 |
会議費・交際費の記入 |
勘定科目に応じて必須欄にする |
| 交通費の区間が不明 |
出発地と到着地 |
入力例を欄の横に出す |
| 領収書がない |
添付の有無 |
添付がないと送れない設定にする |
| 画像が読めない |
ぼやけ・影・端の切れ |
撮り方の見本を案内に載せる |
| 二重に申請した |
前回の申請との重なり |
同じ日付・金額の警告を出す |
差し戻しの連絡は、直す点を具体的に1つずつ書くと、往復が減ります。「不備があります」だけでは、申請者は何を直すか分かりません。
規程の側で決めておくこと
提出が遅れたときの扱い、領収書がないときの書類、画像の扱いを、規程と案内に書いておきます。決まりが曖昧だと、窓口ごとに答えが変わり、申請者が迷って提出を先送りします。期限と例外の扱いは、経費精算の流れの遅れた精算の節が参考になります。
今日からできること
まず、自分の「未処理」の入れ物を今日決めてください。経理の担当は、次の締め日の案内の文面を、この記事の文例をもとに作ってみてください。
この記事は、2026年10月23日時点で国税庁が公表している資料をもとにしています。習慣・段取りの部分は編集部の目安で、会社の規程が優先です。税の扱いの個別の判断は、税理士や所轄の税務署に確かめてください。