部署の共有フォルダを開くと、「請求書」「請求書(新)」「請求書_旧」のように似た名前が並び、どこに入れればよいか、どこにあるのか分からない。そんな状態は、使う人が増えるほど進みます。
この記事では、共有フォルダの構成を決めるときの考え方を整理します。何で分けるか、何段まで掘るか、名前をどう付けるか、決めたルールをどう守るかの順に答えます。階層や名前の付け方は法令の決まりではなく、編集部の目安と例です。製品の機能に触れる部分は、Microsoft と Google の公式の案内で確かめた範囲に限ります(2026年10月時点)。
共有フォルダが探せなくなる原因は、分け方がそろっていないこと
探せない共有フォルダには、共通した型があります。次のどれかが当てはまっていないか、見てみてください。
同じ階に「業務」「年度」「取引先」が混ざっている(「2025年度」の隣に「請求書」と「サンプル商事」がある)
同じ意味のフォルダが複数ある(「請求書」と「請求関係」)
担当者の名前のフォルダがある
「その他」「新しいフォルダ」「一時」が残っている
階層が深く、目的のファイルまで 6〜7 回開く
原因は、ほとんどの場合「作った人が、そのときの都合で分けた」ことです。1 人ずつは合理的でも、人が替わるたびに分け方が重なると、全体として探せなくなります。
困るのは探すときだけではありません。担当が替わったとき、後任はフォルダの意味を前任に聞くしかありません。引き継ぎ書に置き場所を書く方法は引き継ぎ書の書き方 で紹介しています。フォルダの構成に決まりがあれば、書く量は減ります。
何で分けるか 業務・年度・取引先の並べ方を決める
分ける軸は、よく使うものでも 3 つほどです。業務(書類の種類)・年度・取引先 で、どの順に並べるかを決めます。大事なのは、1 つの階に軸を 1 つだけ使うことです。
部署の共有フォルダの構成の例 業務→年度→取引先と、段数の目安 作成: 編集部 / もとの資料: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)
3 つの並べ方の例
並べ方
向いている部署
例
業務 → 年度 → 取引先
経理・総務など書類の種類で探すことが多い部署
01_請求書 / 2026年度 / サンプル商事
年度 → 業務
年間の行事や手続きが多い部署
2026年度 / 01_株主総会
取引先 → 年度 → 業務
取引先ごとに案件が続く営業事務など
サンプル商事 / 2026年度 / 01_契約書
どれを選ぶかは、探すときに何を先に思い出すかで決めます。「去年の請求書を見たい」と考える部署なら、業務が先です。「サンプル商事とのやり取りを全部見たい」と考える部署なら、取引先が先です。
迷うときは、直近の 1 か月で探したファイルを 10 個ほど書き出します。そのとき「何の書類か」「いつの分か」「どの会社か」のどれから探し始めたかを数えると、先に置く軸が見えます。
年度と暦年のどちらにするか
年度のフォルダは、会社の決算 期や、部署の仕事の区切りに合わせます。4 月始まりなら 4 月から翌年 3 月までを 1 つのフォルダにします。名前は「2026年度」のように、年度であることを書きます。暦年(1 月から 12 月)で管理する書類を同じ形で混ぜると、どの年のものか迷います。暦年と年度が混ざる部署は、どちらを基準にするかを紙に書きます(「1 枚の紙」は後で説明します)。
階層は 3〜4 段までにする
階層の深さに、公的な決まりはありません。編集部の目安は、共有フォルダの入口から数えて 3〜4 段まで です。同じ階に並ぶフォルダの数も、ひと目で見渡せる 10〜15 個ほどに収めると、探す手が止まりません。
深くしすぎない理由は、探しにくさだけではありません。公式の案内にも、パスの長さの上限があります。
場面
上限
出典
OneDrive・SharePoint のパス全体
ファイル名を含めて 400 文字まで
Microsoft サポート
OneDrive・SharePoint の個々のフォルダ名・ファイル名
255 文字まで
Microsoft サポート
Windows API が前提にするパスの最大長(MAX_PATH)
260 文字
Microsoft Learn
深い階層に長い日本語の名前を付けると、これらの上限に近づいて、保存や同期で止まることがあります。Microsoft の案内は、特殊な文字や空白が URL でエンコードされた形で数えられる場合があることにも触れています。短い名前と浅い階層にしておけば、この問題に当たりにくくなります。上限の細かな扱いは使う製品や設定で変わるので、困ったときは情報システムの担当に確かめてください。
フォルダで分けすぎず、ファイル名で探す
フォルダの階層を増やすより、ファイル名に手がかりを入れる方が、変更に強くなります。次の章で、そのための名前の付け方を決めます。
フォルダ名とファイル名のルールを 1 つ決める
名前の付け方は、細かい決まりを増やしすぎないのがコツです。守れる量にします。編集部の例を表にしました。
フォルダ名・ファイル名のルールの早見表と見直しの段取り 作成: 編集部 / もとの資料: 国税庁 電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)
項目
ルール(編集部の例)
良い例
避ける例
番号
2 桁の数字とアンダースコア。順番を固定したいフォルダだけ
01_請求書
1.請求書 / ①請求書
日付
YYYYMMDD の 8 桁を先頭に
20261015_議事録
10月15日議事録 / R8.10.15
版
v01、v02 と数字で増やす
案内文_v02
案内文_最新 / 案内文_最終_修正2
取引先
正式名か、決めた略称で統一
サンプル商事
「サンプル」と「㈱サンプル商事」が混在
区切り
アンダースコアで区切り、空白は使わない
日付_取引先_金額
日付 取引先 金額
番号は 2 桁で、飛ばして付ける
フォルダの並びを固定したいときだけ、先頭に番号を付けます。「01」「02」と 2 桁にそろえるのは、並べ替えたときに「10」が「2」より前に来ないようにするためです。あとから間に足せるよう、10 刻み(10・20・30)にする方法もあります。
日付は YYYYMMDD で先頭に置く
年・月・日を 8 桁の数字にして、ファイル名の先頭に置きます。2026年10月15日なら「20261015」です。名前順に並べると日付順になります。和暦と西暦、「10月15日」と「10/15」が混ざる状態を避けられます。
版は番号で、「最新」「最終」は使わない
版は v01、v02 のように番号を増やします。「最新」は次のファイルができた瞬間に古くなり、「最終」は直しが入ると意味を失います。判断を人の記憶に頼らず、番号の大きいものが新しいと決めておきます。
承認が済んだ版だけを別に残したいときは、「承認済」を名前に付ける代わりに、承認済みの置き場を決めます。ファイル名で状態を表すと、状態が変わるたびに名前を直すことになります。
取引先・金額を入れるときは、国税庁の例にそろえる
請求書や領収書のような電子取引のデータには、保存のルールがあります。国税庁の資料では、検索できる状態にする要件として、取引年月日・取引金額・取引先で検索できることが挙げられています。その方法の 1 つとして、ファイル名に規則性をもって内容を入れる例が示されています。たとえば「20210131_㈱霞商店_110000」は、日付・取引先・金額の順です(2026年10月時点の資料で確認)。
請求書などを置く業務のフォルダでは、この順でファイル名を付けておくと、フォルダの構成と検索の要件の両方に使えます。要件の細かい条件や、検索の要件が不要になる場合は、電子帳簿保存法とは にまとめました。
分割・結合した PDF にも、同じ付け方を使います。作り方はPDFの結合・分割・回転のやり方 を参照してください。結合してから名前を付けるか、名前を付けてから結合するかを決めておくと、元のファイルが残ったままになるのを防げます。
個人フォルダと「その他」は作らない
個人名のフォルダを作らない理由
「田中さん作業用」のような個人名のフォルダは、本人にとっては便利です。しかし本人が異動や退職をすると、中身が誰のものか、捨ててよいのかが分からなくなります。共有の場所に置いているのに、実質は本人しか分からない場所になります。
個人の作業は個人用の保存場所で行い、共有する段階で、決めた場所に決めた名前で置く。これを基本にします。
Google の共有ドライブの案内では、共有ドライブ内のファイルは個人ではなくチームが所有し、メンバーが去ってもファイルが残ると説明されています。共有する場所をチームのものとして扱う、という考え方は、個人名のフォルダを作らない理由と同じです。
「その他」「新しいフォルダ」は入れ先の決まらないものが集まる
「その他」は、決まらないものを置く場所になり、いちばん大きくなります。作らない代わりに、入れ先が決まらないものが出たときの手順を決めます。
担当者に聞く(決めるのは担当者)
既存のフォルダに入る意味があれば、そこに入れる
新しい種類の書類なら、担当者が紙に追加してフォルダを作る
どうしても一時的な置き場が必要なときは、「00_仮置き」を 1 つだけ作り、置いてよい期間(たとえば 1 か月)を決めて、担当者が月初に空にします。
保存期間が過ぎたものはアーカイブへ移す
年度が終わった書類を、現役の場所に置き続けると、フォルダが年々重くなります。アーカイブ (保管用の置き場)を作り、年度が終わったら移します。
編集部の例では、共有フォルダの入口に「99_アーカイブ」を置き、その下に年度ごとのフォルダを移します。移すのは年度が替わったあとの決まった月(決算の後など)に、担当者がまとめて行います。
法律で決まった保存期間は書類ごとに異なります。いつまで残し、いつ廃棄できるかは会社の書類の保存期間 で一覧にしているので、ここでは繰り返しません。同じ記事には、フォルダ名の先頭に廃棄予定の年を付けて、捨てる候補をそろえる方法も紹介しています。
アーカイブに移すときの確かめは、次の 3 つです。
保存期間が過ぎているか(迷ったら残す)
移したあとも、フォルダ名とファイル名のルールが同じか
閲覧できる人の範囲を、アーカイブでも決めているか
アーカイブの権限や、保管中の情報の守り方といった細かい設計は、情報システムの担当の領分です。部署として決めるのは、どの範囲の人が見る場所かまでにとどめます。
共有の範囲は、部署で決めておく
製品によって、権限の考え方は違います。たとえば Google の共有ドライブには、メンバーにアクセスレベル(閲覧者・投稿者・コンテンツ管理者・管理者など)が割り当てられる仕組みがあります。細かい権限の設計は情報システムの担当と相談するものです。
部署として決めるのは、次の程度で足ります。
この共有フォルダを使う人は誰か(部署全員か、特定の担当か)
見られてよいのは誰までか
外部の人に渡すときは、共有フォルダではなく別の方法にするか
ルールを決めて守るための段取り
ルールは、決めるだけでは守られません。次の 5 つで運びます。
段取り
やること
1 担当を決める
フォルダの持ち主を 1 人と、代わりの人 1 人
2 現状を見る
同じ意味のフォルダ、個人名、「その他」を数える
3 1 枚の紙にする
軸の順序・段数・名前の付け方・置き場を書く
4 移して知らせる
移す日を決め、移し終えたら全員に連絡する
5 年 1 回見直す
年度替わりに、紙と実際のフォルダを見比べる
ルールは 1 枚の紙に書く
ルールの文書は 1 枚にします。長いと読まれません。書くことは、軸の順序と段数、名前の付け方(番号・日付・版・区切り)、置いてはいけないもの(個人名のフォルダ・「その他」)、担当者の名前です。この紙を、共有フォルダの一番上に置きます。
移す日を決めて、一度に移す
ルールを決めても、今あるフォルダが元のままでは変わりません。移す日を決め、その日のうちに一度に移します。少しずつ移すと、古い置き場と新しい置き場の両方に最新が分かれて、かえって探せなくなります。
移す前に、フォルダの中身を人が見ずに動かすと、必要なファイルが見つからなくなることがあります。移した後に、よく使うファイルの場所を一覧にして、全員に伝えます。
年 1 回、年度替わりに見直す
見直しは、年度が替わるタイミングで 1 回です。次を確かめます。
紙のルールと実際のフォルダが合っているか
個人名のフォルダと「その他」が増えていないか
担当者に異動がなかったか
守られていない箇所があれば、人を責めるより、ルールが現実に合っていないのではないかを先に考えます。守りにくいルールは、直します。
今日からできること
自分の部署の共有フォルダを開き、入口から 3 階まで、どの軸で分けているかを書き出す
同じ意味のフォルダ、個人名のフォルダ、「その他」の数を数える
直近の 1 か月で探したファイルを 10 個ほど書き出し、最初に思い出す手がかり(業務・年度・取引先)を決める
名前の付け方(番号・日付・版)を、この記事の早見表から 3 つ選んで 1 枚の紙にする
担当者と代わりの人を決め、年度替わりの月に見直す予定を入れる
すべてを一度に直す必要はありません。まず新しく作るフォルダとファイルから、同じ付け方に変えるだけでも、探す時間は少しずつ減ります。