「10年目の期間を追納する最後の機会です」。日本年金機構からこんな案内を受け取ると、学生のときの保険料を今すぐ払わないといけないのかと、少し焦りますよね。
期限は月ごとに来ます。2016年11月分なら2026年11月30日までで、そのあとは1か月ずつ、古い月から払えなくなります。
払うかどうかは、人によって答えが変わります。決めるのに要る数字は、払う額と増える年金、軽くなる税の3つです。
期限は月ごとに、古い順に来る
届いた案内は、玄関で開けたまま読みたくなるイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
追納できるのは、承認された月の前10年以内の分です。1追納申込書の例では、2017年10月の分は2027年10月31日まで。その月から10年後の同じ月の末日、と覚えておけば十分です。
払う順番も決まっていて、原則は古い月から。好きな年度だけを選ぶことはできません。
学生だった年度ごとに、期限が来る1年と加算の額が分かる作成: 編集部 / 出典: 日本年金機構
学生だった年度の行を見ると、その年度の分がいつ消えていくかが分かります。案内が届いていなくても、申し込めば追納できます。
ただ、申込みが期限の直前だと間に合わないことがあります。2016年11月分や12月分を払いたい人は、今月のうちに動くのがよさそうです。
どの月が残っているかは、ねんきんネットの「納付・後払い(追納)可能月数と金額の確認」で分かります。払う場合と払わない場合の年金見込額も比べられるので、最初に開くならここです。
1か月は約1万7,000円、増える年金は年約1,765円
2027年3月31日までに払う額は、年度で少しずつ違います。
| 学生だった年度 |
対象の月 |
1か月の追納額 |
12か月分 |
| 平成28年度 |
2016年4月〜2017年3月 |
16,850円 |
202,200円 |
| 平成29年度 |
2017年4月〜2018年3月 |
17,070円 |
204,840円 |
| 平成30年度 |
2018年4月〜2019年3月 |
16,900円 |
202,800円 |
| 令和元年度 |
2019年4月〜2020年3月 |
16,950円 |
203,400円 |
| 令和2年度 |
2020年4月〜2021年3月 |
17,070円 |
204,840円 |
| 令和3年度 |
2021年4月〜2022年3月 |
17,110円 |
205,320円 |
| 令和4年度 |
2022年4月〜2023年3月 |
16,990円 |
203,880円 |
| 令和5年度 |
2023年4月〜2024年3月 |
16,770円 |
201,240円 |
| 令和6年度 |
2024年4月〜2025年3月 |
16,980円 |
203,760円 |
| 令和7年度 |
2025年4月〜2026年3月 |
17,510円 |
210,120円 |
額がそろわないのは、当時の保険料の差に加算が重なるからです。2いちばん高い令和7年度の分でも、令和8年度の保険料17,920円を下回ります。平成28年度はすでに期限を過ぎた月があり、11月分から3月分の5か月なら84,250円。2027年4月以降に払うなら、その年度の額を確認します。
増えるのは老齢基礎年金です。
学生納付特例の期間は、年金を受け取るのに必要な10年には数えられますが、追納しないと年金額には入りません。3令和8年度の満額は月70,608円、年847,300円。編集部の計算では、これを480か月で割った1か月分が年約1,765円で、12か月分なら年約2万1,180円です。2年分を猶予したままだと、ほかの期間をすべて納めていても、満額より年約4万2,400円少なくなります。
では、払った分に年金が追いつくのはいつでしょう。令和元年度の12か月分203,400円なら、今の年金額のままで約9.6年。65歳から受け取ると、74歳台で届く計算です。年金額は毎年度見直されますし、受け取るときの税金や社会保険料も入っていないので、あくまで物差しです。
一方、追納しなくても失わないものがあります。承認を受けた期間は、障害基礎年金と遺族基礎年金の納付要件で、納めた期間と同じように数えられます。未納と違うのはここです。2つの年金の額も、納めた月数では変わりません。
控除は払った年に、全額入る
追納した額は、全額が社会保険料控除の対象です。4何年前の分でも、入るのは実際に払った年。12月31日までに払えば今年の分で、年が明けると来年の分に回ります。
編集部の例。払う額と増える年金から、届くまでの年数を見る作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省・日本年金機構・国税庁・総務省
自分の税率は、去年の源泉徴収票で分かります。「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いて、図の表に当てはめるだけ。
税率10%の人が203,400円を払うと、軽くなるのは約4万1,100円です。所得税は年末調整か確定申告で戻り、住民税は次の年度の分が下がります。
控除は、税をたくさん払っている年ほど効きます。育休で収入が少ない年より、働いている年に払うほうが、軽くなる額は大きいでしょう。
住民税の所得割額が減るぶん、ふるさと納税の上限は下がります。同じ年に寄附するなら、額を決める前に計算し直しておくと、上限を超えずに済みます。
親や配偶者が代わりに払うなら、控除を受けるのは払った人です。生計を一にしていることが条件で、判定は払った時点で見ます。生計が別の親が払った分は親の控除にならず、払っていない本人の控除にもなりません。
全部か何もしないかで考えない
追納は一部だけでもできます。古い月から必要な分だけ払えばよく、申込書の分割区分の欄では、全部一括のほか、1か月分ごとから6か月分ごとまで選べます。
迷うのは、手元のお金との兼ね合いでしょう。追納したお金は、老後まで戻ってきません。転職や引っ越し、産休や育休の準備など、近いうちに使うお金を残して、その残りで考えると無理がありません。
10年を過ぎた月は、もう払えません。それでも満額に近づける道は残っていて、60歳から65歳になるまでの任意加入がそれです。ただ、厚生年金に入って働いている間は加入できず、40年分に達するまでという上限もあります。
12月に払うなら、証明書の手順が変わる
今から追納する人がつまずきやすいのは、控除証明書です。
今年の1月から9月に国民年金保険料を払っていない人が10月以降に払うと、証明書が届くのは年が明けてから。電子データは1月下旬から、書面は2月です。厚生年金に入って働いている人の多くは、ここに当たるはずです。届くのを待っていると、年末調整には間に合いません。
でも、慌てなくて大丈夫。払ったときの領収証書を添えれば申告できると、日本年金機構も案内しています。
- ねんきんネットで、残っている月と金額を確認する。
- 追納申込書を、年金事務所の窓口か郵送で出す。
- 届いた納付書で、書かれた期限までに払う。
- 領収証書を保険料控除申告書に添えて、会社に出す。
- 間に合わなければ、確定申告で控除を受ける。
ねんきんネットで作る申込書は電子申請ではないので、印刷して提出します。街角の年金相談センターでは手続きできません。支払いは金融機関やコンビニ、スマートフォンアプリなどで、口座振替とクレジットカードは使えません。
スマートフォンアプリで払うと、領収証書が手元に残らないのが悩ましいところです。ねんきんネットから控除証明書の再発行を申し込めますが、発送まで1週間ほどかかります。
申告書のどの欄に書くかは保険料控除申告書の書き方で、年末の手続き全体は年末までにやることでご覧いただけます。
案内の「最後の機会」は、10年目の月の話です。全部の月が今月で終わるわけではありません。いちばん古い月の期限を見て、残りはゆっくり決めてもいいのです。
記事の内容は2026年11月1日時点のものです。金額は令和8年度の保険料と年金額、税は令和8年分の税率によるものです。自分の月数や額は年金事務所で、税のことは税務署や税理士に相談できます。