評価面談の前日になって、4月に何をしていたか思い出せない。そんな経験はありませんか。
週に1回、金曜の終わりに5分だけ、その週の仕事を3行で残しておく。これだけで、面談の前に半年分を掘り返さずに済みます。たまった行は、転職するときの職務経歴書の材料にもなります。
評価する人にも、メモが勧められている
金曜の終業前に、その週の仕事を手帳に3行だけ残すイラスト: 編集部が画像生成AIで作成したイメージ(YOBITSUGI AI・OpenAI gpt-image-2.5-sunburst)
大きな仕事なら覚えているはず、と思いますよね。でも、半年前の記憶はあまり頼りになりません。
国家公務員を評価する手引きとして内閣人事局と人事院が作った「人事評価マニュアル」は、評価する上司に向けて、こう呼びかけています。「時間の経過とともに記憶があいまいになるため、期末の評価に備えて、備忘のための記録等を残しておくことが有効です」。1
評価する側でさえ、記憶だけでは足りないのです。
民間の会社に当てはまる決まりではありませんし、上司がどこまでメモを取っているかも人それぞれでしょう。だからこそ、自分の仕事の記録は自分で持っておきたいところです。
同じマニュアルには、働く側にも効く一文があります。期首に決めた目標にとらわれすぎず、「突発的な業務や自主的な取組等」も積極的に評価するよう求めているのです。目標シートに載っていない仕事は、自分で残さないと、どこにも残りません。急に頼まれた資料も、休んだ人の代わりに回した窓口も。そういう仕事ほど、メモが効きます。
金曜の5分で、3行だけ残す
毎日つけなくてかまいません。先のマニュアルも「事実発生の都度、記録(メモ)に留めることは難しい」と認めたうえで、手すきのときにまとめてメモを取るよう勧めています。週に1回なら、なんとか続けられそうです。
- カレンダーの金曜の終業前に、5分の繰り返しの予定を入れる。
- その週のカレンダーと送信済みメールを開き、仕事を1つ選ぶ。
- したこと、数字か変化、相手の順に3行でメモする。
選ぶのはあとで話せそうな仕事を1つだけ。書くことがない週は「月次の締め、通常どおり」の1行でかまいません。空欄を作らないほうが、次の週も開きやすいからです。1週1件でも、半年で26件になります。
3行の中身は職務経歴書の準備とも重なります。ハローワークの「職務経歴書の作り方」は、振り返る項目に「どんな内容の仕事をしたか」と「どんな経過でどんな成果をあげたか」を挙げています。2週の3行は、その下書きを毎週少しずつ作っている形です。
楽しかった仕事には、印を1つ付けておくのもおすすめです。異動や転職を考えるとき、何をしているときに手応えがあったのかが、あとから見えてきます。
週の3行の例と、たまった行の使い方作成: 編集部 / 出典: 内閣人事局・人事院「人事評価マニュアル」ほか
数字にしにくい仕事は、5つの形で残す
総務や人事、経理の仕事には、売上のような分かりやすい数字がないことも多いですよね。でも、実績は数字だけではありません。同じハローワークの資料は、職務経歴書の実績欄に書く見出しの例に「お取引先の評価/お客様の評価」を挙げ、数値は「可能であれば」、「エピソードなどの付記可」としています。
迷ったら、その仕事がどの形に近いかを考えると、残すことが決まります。
| 仕事の形 |
残すこと |
3行の例 |
| 防いだ |
何をしたから起きなかったか |
契約の更新期限を一覧にして月初に確認。今期の更新漏れは0件 |
| 支えた |
相手と回数 |
営業事務の2人に、月初の集計のやり方を3回説明した |
| 整えた |
前と後 |
申請書の保存先を1か所にし、聞かれる回数が週3回から週1回に |
| 教えた |
相手と、できるようになったこと |
新人1人に給与計算を3か月教え、10月から1人で処理できるように |
| 続けた |
期間と頻度 |
来客対応を2年間、毎日担当。取り次ぎの要点を共有メモに残す形にした |
いちばん残りにくいのは「防いだ」仕事です。起きなかったことは、誰の目にも見えません。だから、起きなかったという結果より、何をしたから起きなかったのかを先にメモします。
「整えた」仕事には、ちょっとしたコツがあります。前と後を比べるには、変える前の数が要るのです。やり方を変えようと思ったら、その週のメモに今の回数や時間を1行入れておいてください。あとからでは数えられません。
相手の言葉は、できるだけそのまま残します。「助かった」「説明が分かりやすかった」のような短い一言で十分です。反対に「丁寧に対応した」「がんばった」は、半年後に読み返しても、何があったのかが分かりません。
数字にしにくい仕事を、事実のメモに変える5つの形作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省・ハローワーク「職務経歴書の作り方」
会社の情報は、メモに写さない
転職に備えるなら、ここだけは気をつけてください。自分がした仕事の経験は自分のものですが、顧客名や非公開の金額、資料そのものは会社の情報です。
厚生労働省のモデル就業規則には「在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと」という項目があります。3自分の会社にも同じような定めがないか、就業規則で確認してみてください。秘密として管理され、事業に役立ち、世に知られていない情報は、不正競争防止法の営業秘密として守られる情報でもあります。
悪気がなくても、問題は起きます。情報処理推進機構の調査で、過去5年以内に営業秘密の漏えいを認識していた回答者に経路を聞くと、現職の従業員などの「ルール不徹底(ルールを知らなかった等)」が32.6%、中途退職者が17.8%でした。4
そこで、記録は2段に分けます。週のメモは、社内のノートアプリや会社の手帳など、会社が認めている場所に。個人のスマートフォンや私用のメールには、仕事の情報を送りません。そして半年に1度、自分用の控えを作るときに、会社の情報を言い換えます。
| 週のメモ |
自分用の控え |
| 〇〇商事の請求書を担当 |
製造業の取引先30社の請求書を担当 |
| 田中さんに給与計算を説明 |
新入社員1人に給与計算を指導 |
| 経費を月80万円削減 |
経費の削減を提案し、前年より1割減 |
| 契約書のファイル |
持ち出さない |
割合でも、社外に出せない数字はあります。控えに写してよいか迷ったら、写さない。これがいちばん安全です。生成AIに渡すときも考え方は同じで、渡す前に伏せる情報は生成AIで1年の振り返り 実績メモから自己評価の下書きを作る頼み方で確認できます。
面談と転職までの段取り
たまった行は、次の順に使います。
- 月末に、その月の行から1つだけ印を付ける。
- 面談の2週間前に、印の行を目標シートの順に並べる。
- 並べた行を文にして、自己評価に入れる。
- 年に1回、印の行を言い換えて、自分用の控えに移す。
3番の文の形は、評価面談の自己評価の書き方 半年の記録から実績を拾い、3文で伝えるがそのまま使えます。週のメモから始めれば、記録を掘り返す手間はほとんどかかりません。
4番の控えは、ハローワークの資料でいう「マスターシート」の種になります。職務経歴や能力を網羅したシートを作っておけば、応募先ごとに必要なことを選ぶだけで済む、という考え方です。職務経歴書そのものの形は、職務経歴書の書き方 事務職の実績を数字で伝える項目と書き方の例で確認できます。転職の予定がなくても、控えがあれば異動の希望を出すときに使えるでしょう。
次の面談の前日、開けばそこに半年分の行がある。「上期はどうでしたか」と聞かれても、数字と相手の言葉で答えられます。
まずは来週の金曜の終業前に、5分の予定を1つ入れるところから。
記事の内容は、2026年11月6日に内閣人事局や厚生労働省などの資料で確認しました。