厚生労働省は2026年10月23日、毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果確報を公表しました。パートタイム労働者の時間当たり給与は1,478円で、前年同月より4.7%高くなっています。この記事では、パートの時給をいくらにするかを、この統計と最低賃金で確かめる段取りを説明します。制度と数字は2026年10月23日時点のものです。
パートの時給を決めるときに見る3つ
時給は、次の3つを順に見ると決めやすくなります。金額は会社ごとに違うので、この記事では「いくらがよい」とは書きません。どの資料の、どの数字を、どう使うかを整理します。
| 見るもの |
役割 |
使う資料 |
注意する点 |
| 最低賃金 |
これを下回れない下限 |
地域別最低賃金(都道府県ごと) |
事業場の所在地の額。算入しない賃金を引いて比べる |
| 統計の相場 |
外のものさし |
毎月勤労統計・賃金構造基本統計調査 |
調査の範囲と定義が違う。同じ統計の中で比べる |
| 社内のバランス |
内のものさし |
正社員の賃金表・パート同士の時給 |
仕事の内容・責任・経験の違いを説明できるか |
3つのうち1つだけで決めると、あとで困ることがあります。最低賃金だけを見ていると、発効日のたびに同じ職場の時給の差が縮まります。統計の平均だけを見ても、自社の産業や地域とは条件が違うかもしれません。
毎月勤労統計の時間当たり給与はどう読むか
毎月勤労統計調査(以下、毎勤)は、厚生労働省が毎月まとめる、雇用・給与・労働時間の調査です。常用労働者を5人以上雇う事業所が対象です。パートタイム労働者の時間当たり給与は、時系列第7表に載っています。
出し方は、表の注に書かれています。所定内給与を所定内労働時間で割った額です。2026年8月は、所定内給与が111,410円、所定内労働時間が75.4時間で、公表された値は1,478円です。111,410円を75.4時間で割ると約1,477.6円になり、公表値と合います。
パートタイム労働者の定義は、概況の用語の説明にあります。常用労働者のうち、次のどちらかに当てはまる人です。
- 1日の所定労働時間が一般の労働者より短い人
- 1日の所定労働時間は同じでも、1週の所定労働日数が一般の労働者より少ない人
呼び名がパートでもアルバイトでも、勤務の時間と日数で決まります。
パートの時間当たり給与の月次と前年同月比(2025年7月〜2026年8月)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年8月分結果確報」
8月分と最近の動き
時系列第7表から、2025年7月以降の月次の値を写します(事業所規模5人以上・調査産業計)。
| 月 |
時間当たり給与 |
前年同月比 |
| 2025年7月 |
1,381円 |
3.1% |
| 8月 |
1,411円 |
3.6% |
| 9月 |
1,388円 |
2.8% |
| 10月 |
1,401円 |
3.2% |
| 11月 |
1,424円 |
4.0% |
| 12月 |
1,426円 |
3.5% |
| 2026年1月 |
1,446円 |
3.7% |
| 2月 |
1,443円 |
4.2% |
| 3月 |
1,437円 |
4.3% |
| 4月 |
1,434円 |
4.7% |
| 5月 |
1,453円 |
5.0% |
| 6月 |
1,446円 |
4.4% |
| 7月 |
1,455円 |
5.4% |
| 8月 |
1,478円 |
4.7% |
年の値は、2022年が1,242円(前年比1.6%)、2023年が1,279円(3.0%)、2024年が1,343円(4.3%)、2025年が1,394円(3.8%)です。2026年は、1月以降の前年同月比が3.7%から5.4%の間にあります。月ごとに上下があるので、1か月だけで判断せず、数か月の流れで見ます。
同じ8月の概況には、パートタイム労働者比率が31.41%(前年同月差0.20ポイント)とあります。常用労働者の3割ほどが、パートタイム労働者です。
使うときの注意
毎勤の時間当たり給与は、次の点に気をつけて使います。
- 全国の調査産業計の1つの数字です。 業種・地域・年齢の別は、時系列第7表には出ません。
- 所定内給与には、毎月決まって払う手当が入ります。 用語の説明では、きまって支給する給与に基本給、家族手当、超過労働手当が含まれ、そのうち所定外のものを除いたのが所定内給与です。最低賃金が算入しない手当を含むため、最低賃金と同じ範囲の金額ではありません。
- 最低賃金の額とは、集計の仕方が違います。 2026年度の全国加重平均1,177円との差は301円ですが、これは相場の上乗せ分ではありません。
| 業種(8月・パートタイム労働者) |
所定内給与 |
所定内労働時間 |
割った額(編集部の計算) |
| 調査産業計 |
111,410円 |
75.4時間 |
約1,478円(公表値と同じ) |
| 製造業 |
133,112円 |
99.4時間 |
約1,339円 |
| 卸売業,小売業 |
111,353円 |
82.8時間 |
約1,345円 |
| 運輸業,郵便業 |
130,265円 |
92.1時間 |
約1,414円 |
| 宿泊業,飲食サービス業(飲食サービス業等) |
84,549円 |
63.8時間 |
約1,325円 |
| 医療,福祉 |
131,405円 |
73.1時間 |
約1,798円 |
賃金構造基本統計調査で産業別と分布を見る
毎勤は月ごとの動きを見る統計です。時給の水準を産業や分布で見るには、賃金構造基本統計調査(以下、賃構)の短時間労働者の「1時間当たり賃金」が向いています。令和7年の結果は2026年3月24日に公表されました。2025年6月分の賃金で、10人以上の常用労働者を雇う民営事業所が対象です。
賃構の1時間当たり賃金は、労働者ごとに所定内給与を所定内実労働時間で割り、それを平均した額です。毎勤の出し方とは違います。時点も対象も違うので、2つの数字を並べて「高い・低い」と言うことはできません。
| 比べるもの |
毎月勤労統計(時系列第7表) |
賃金構造基本統計調査(第11表) |
| 対象の事業所 |
常用労働者5人以上 |
常用労働者10人以上の民営 |
| 時点 |
毎月(2026年8月は1,478円) |
2025年6月分 |
| 出し方 |
所定内給与の平均 ÷ 所定内労働時間の平均 |
労働者ごとの時間額の平均 |
| 内訳 |
調査産業計のみ |
産業・企業規模・年齢・男女 |
パートの1時間当たり賃金 産業別と分布(令和7年・賃金構造基本統計調査)作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
産業別の1時間当たり賃金(令和7年・男女計)
| 産業 |
1時間当たり賃金 |
対前年増減率 |
| 教育,学習支援業 |
2,541円 |
-3.3% |
| 医療,福祉 |
2,113円 |
1.3% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 |
1,874円 |
10.4% |
| 情報通信業 |
1,853円 |
3.9% |
| 金融業,保険業 |
1,829円 |
-1.9% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 |
1,814円 |
7.8% |
| 建設業 |
1,596円 |
4.0% |
| 複合サービス事業 |
1,439円 |
5.9% |
| 不動産業,物品賃貸業 |
1,389円 |
3.5% |
| サービス業(他に分類されないもの) |
1,377円 |
1.0% |
| 運輸業,郵便業 |
1,371円 |
6.2% |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 |
1,369円 |
-12.0% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 |
1,330円 |
6.7% |
| 製造業 |
1,298円 |
4.8% |
| 卸売業,小売業 |
1,268円 |
4.2% |
| 宿泊業,飲食サービス業 |
1,234円 |
3.7% |
全体の男女計は1,518円(対前年増減率2.8%)で、平均年齢は46.2歳、勤続年数は6.5年です。企業規模別では、大企業(常用労働者1,000人以上)が1,473円、中企業(100〜999人)が1,626円、小企業(10〜99人)が1,491円でした。
平均より中位数を見る
平均は、高い賃金の人に引っ張られます。付表4には、1時間当たり賃金の分布が載っています(企業規模計・男女計)。
| 区分 |
1時間当たり賃金 |
| 第1十分位数(低い方から10分の1番目) |
1,036円 |
| 第1四分位数(4分の1番目) |
1,116円 |
| 中位数(真ん中) |
1,241円 |
| 第3四分位数(高い方から4分の1番目) |
1,448円 |
| 第9十分位数(高い方から10分の1番目) |
1,874円 |
| 平均 |
1,518円 |
平均の1,518円より、中位数の1,241円のほうが、ふつうの時給のイメージに近くなります。賃金階級別の割合では、1,000〜1,199円の4つの区分で合計38.2%、1,200円から1,299円の区分が17.6%で最も多くなっています。3,000円以上の人も3.4%いて、平均を押し上げています。
自社の時給を並べるときは、平均だけでなく、自社の産業の行と、全体の分布のどのあたりに自社の人が並ぶかを見ます。
最低賃金との比べ方
最低賃金は、毎年10月前後に改定されます。2026年度の全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円(約5.0%)上がりました。最高は東京都の1,280円、最低は宮崎県の1,085円です。都道府県ごとの額と発効日は、最低賃金の改定額と発効日一覧にまとめています。2026年10月23日時点では、10月24日の宮崎県から順に、15府県がこれから発効します。推移と引上げの見込み方は最低賃金の推移をご覧ください。
比べる手順
時給で働く人は、時給と最低賃金の時間額を直接比べます。厚生労働省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」では、時間給制の場合は「時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)」です。ただし、比べる前に、対象にならない賃金を引きます。
| 最低賃金に算入しない賃金 |
例 |
| 臨時に支払われる賃金 |
結婚手当など |
| 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 |
賞与など |
| 所定労働時間を超える労働の賃金 |
時間外割増賃金など |
| 所定労働日以外の労働の賃金 |
休日割増賃金など |
| 深夜労働の賃金のうち、通常の賃金を超える部分 |
午後10時から午前5時の割増賃金など |
| 精皆勤手当・通勤手当・家族手当 |
この3つの手当 |
たとえば、愛知県の事業場で、時給1,230円のパートの人がいるとします(架空の例)。愛知県の2026年度の最低賃金は1,195円です。差は35円で、最低賃金の約2.9%にあたります。時給とは別に通勤手当を払っていても、通勤手当は算入しないので、比べ方は変わりません。時給に通勤手当の相当額を含めて決めている場合は、その分を引いてから比べます。
差が小さいほど、次の改定で最低賃金に追いつかれやすくなります。ただし、来年度の引上げ額は、まだ決まっていません。2025年度は66円、2026年度は56円でした。
発効日の前に見直す段取り
最低賃金は、都道府県の答申のあと、公示から30日を過ぎて発効します。2026年度は、9月3日に47都道府県の答申がそろい、10月1日から12月2日までに順に発効しています。発効日の前に済ませたいのは、次の5つです。
- 事業場の所在地と、適用される額、発効日を確かめます。派遣労働者は、派遣先の事業場がある都道府県の額です。
- 時給から、算入しない賃金を引きます。
- 新しい額と比べます。
- 足りない人の新しい時給を決めます。差が小さい人は、次の改定も見込んで決めます。
- 本人に知らせ、労働条件通知書と給与計算の単価を直します。
正社員との均衡 同一労働同一賃金の考え方
最低賃金を上回っていても、正社員との差が説明できなければ、あとで問題になることがあります。パートタイム・有期雇用労働法8条は、待遇のそれぞれについて、通常の労働者との間に不合理な相違を設けてはならないと定めています。考慮するのは、業務の内容と責任の程度、配置の変更の範囲、その他の事情のうち、その待遇の性質と目的に照らして適切なものです。
厚生労働省の指針(2026年4月28日改正)は、基本給の考え方を次のように示しています。
| 基本給の決め方 |
指針の考え方 |
| 能力や経験に応じて払う |
同じ能力・経験なら、その部分は同じ基本給。違いがあれば、その違いに応じた額 |
| 業績や成果に応じて払う |
同じ成果なら、その部分は同じ。違いがあれば、その違いに応じた額 |
| 勤続年数に応じて払う |
同じ勤続年数なら、その部分は同じ。違いがあれば、その違いに応じた額 |
通勤手当は、パートにも正社員と同一のものを支給するとしています。時間外・深夜・休日の割増も、同じ時間数と職務内容なら、同じ割増率で払います。指針の「問題とならない例」には、就業の時間帯や、土日祝日かどうかで、時間当たりの基本給に差をつけることも含まれています(正社員とパートに共通の基準を設けた場合)。
説明の義務もあります。同法14条2項により、パートから求められたときは、通常の労働者との待遇の相違の内容と理由を説明しなければなりません。指針は、将来の役割期待が違うといった主観的・抽象的な説明では足りず、客観的・具体的な実態に照らす必要があるとしています。2026年10月1日からは、労働条件通知書に、待遇の違いの説明を求められる旨も書くようになりました(くわしくは労働条件通知書の書き方)。
募集と通知書での時給の書き方
時給を決めたら、募集のときと採用のときに、同じ額を書きます。募集のときは職業安定法にもとづく明示で、項目の決まりは求人票の書き方にあります。採用のときの書面は労働条件通知書の書き方で説明しています。
時給で書くときは、次の点を確かめます。
- 金額は「時給○○円」と書き、通勤手当など別に払うものは別の項目にする
- 時間外・休日・深夜の割増賃金の率は、別に書く
- 昇給・賞与の有無は、パートも書く
社会保険の加入と年収の関係
時給と週の労働時間を決めると、年収の目安が出ます。たとえば週20時間で働く人の年間の所定労働時間は、20時間×52週で1,040時間です。年収130万円は、時給1,250円のときにあたります(1,300,000円÷1,040時間)。
社会保険の加入は、2026年10月に賃金要件が撤廃され、週の所定労働時間が20時間以上かなどで見るようになりました。加入の条件はパート・アルバイトの社会保険に、税と社会保険の扶養の違いは扶養とはにあります。時給を上げると同じ時間数でも年収が増えるので、扶養の範囲で働く人には、勤務時間を調整したい人も出てきます。シフトの組み方を一緒に考えておくと、行き違いを防げます。
時給の見直し 年間の段取り
公的な数字が出る時期に合わせて、見直しを進めます。かっこ内は2026年の日付です。
パートの時給 見直しの年間の段取りと最低賃金に算入しない賃金作成: 編集部 / もとの資料: 厚生労働省「毎月勤労統計調査」「賃金構造基本統計調査」「最低賃金の対象となる賃金」
| 時期 |
公的な動き |
会社がすること |
| 2〜3月 |
毎勤の年平均(12月分確報は2027年2月26日)、賃構の公表(2026年は3月24日) |
前年の時給の分布と、相場の表を作る |
| 4〜6月 |
最低賃金の諮問(2026年は6月26日) |
正社員との差の理由を書き出し、時給の決め方を文書に残す |
| 7〜8月 |
目安の答申(2026年は7月28日) |
事業場ごとに、目安どおり上がったときの差を出す |
| 9月 |
47都道府県の答申(2026年は9月3日) |
額と発効日を確かめ、改定案を決める |
| 10〜12月 |
発効(2026年は10月1日〜12月2日) |
通知書・給与計算・周知を発効日の前に済ませる |
自社で決める 時給を決める項目
金額は会社ごとに決めます。次の表を埋めると、決めた理由を残せます。
| 項目 |
見る資料 |
自社で決めること |
| 下限 |
事業場の都道府県の最低賃金 |
最低賃金との差を、いくらまで空けるか |
| 相場 |
賃構の産業別・分布、毎勤の動き |
どの産業の行と、どの位置を目安にするか |
| 社内 |
正社員の賃金表、パート同士の時給 |
経験・資格・責任による差の付け方 |
| 時間帯 |
早朝・深夜・土日祝の人手の状況 |
時間帯で上乗せするか(共通の基準にする) |
| 見直し |
最低賃金の発効日、年間の段取り |
見直す時期と、本人に知らせる方法 |
今日からできること
- 事業場ごとに、最低賃金の額と発効日を確かめます。10月24日以降に発効する府県は、まだ間に合います。
- パートの時給を一覧にし、時給から算入しない賃金を引いて、最低賃金との差を出します。
- 賃構の産業別の表で、自社の産業の行を写します。中位数1,241円と並べて、自社の位置を見ます。
- 正社員との仕事の違いを書き出し、時給の差の理由を説明できるか確かめます。
- 時給の決め方(基準・時期)を文書に残し、通知書と求人票の書き方をそろえます。
最低賃金や賃金の個別の判断は、都道府県労働局、労働基準監督署、社会保険労務士に確かめてください。